
廃タイヤをリサイクルしたバッグのブランド「SEAL」を展開するモンドデザイン(東京・港)は、新ブランド「PLASTICITY(プラスティシティ)」を立ち上げた。廃棄されるビニール傘を再利用するブランドで、独自の加工法を開発。第1弾として2020年4月14日、トートバッグなど3製品を発売した。
「PLASTICITY(プラスティシティ)」はクリエイターの⿑藤明希氏と共同開発したもので、街中や駅に捨てられたり、忘れ物として保管された後に最終的に廃棄されたりするビニール傘をリサイクルしている。傘の素材は防⽔性が高く、汚れが落としやすくメンテナンス性に優れている。
その特性を最⼤限活かすため、粉砕したり溶かしたりして再利用するのではなく、傘のビニールをそのままの状態で何層も重ねてプレスをする独⾃の加⼯⽅法を開発した。同社によると、捨てられたビニール傘をそのままの状態で再利⽤する試みは世界初だという。
チープな素地の重ね合わせで雨の滴りを表現
「2015年ごろから、廃棄されるビニール傘を使って何か作りたいというアイデアは持ち続けていた」とモンドデザイン代表の堀池洋平氏は言う。しかし、なかなか具体的な形にならなかったのは、「ビニール傘は見た目や手触りなどがペラペラで安っぽく、質感にあまり魅力がない。そんな素材からどうやって価値を感じてもらえる製品を作り出すかが難しかった」と堀池氏は振り返る。
アイデアをずっと温めていた堀池氏は、19年10月ごろ、展示会で⿑藤氏の作品に出合った。それはビニール傘のビニールをアイロンによる手作業で重ね合わせて作ったアート作品だった。ビニールを何層も重ねることで微細な空気が入り込んだり内部にシワが残ったりすることが、奥行きのある質感を生んでいた。
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「この質感を再現できれば、多くの人に使ってもらえる魅力的な製品ができる」(堀池氏)。この出合いから生まれたのがPLASTICITYだ。「我々はこのビニールを圧着した素材を『GLASS RAIN』と呼んでいる。窓に雨が当たって滴り落ちるような表情が、この素材の魅力だ」(同)。
しかし、アイロンを使って1枚1枚手作業で作るのには時間が掛かり過ぎ、とても製品化はできない。手作業で作り出す質感を再現しながら、ある程度のロットを継続的に生産できるようにする体制づくりが必要だった。
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