ごみから服を作るブランド auや吉野家の広告も前代未聞の再利用(画像)

SDGs(持続可能な開発計画)の先進地域、欧州のサステナブルブランドが「ECOALF(エコアルフ)」だ。海洋ごみから衣服を作るなど、廃棄物のリサイクルにも積極的で、2020年3月、三陽商会と組んで日本進出を果たした。旗艦店「ECOALF 渋谷」の開店広告には、他社の広告を再利用。注目を浴びた。

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海洋プラスチックを再生した素材で作った「ECOALF(エコアルフ)」の「ELIOT ニッティング スニーカー」(1万4300円、税込み、以下同)。「HELP US CLEAN THE OCEANS」のメッセージが添えられている
海洋プラスチックを再生した素材で作った「ECOALF(エコアルフ)」の「ELIOT ニッティング スニーカー」(1万4300円、税込み、以下同)。「HELP US CLEAN THE OCEANS」のメッセージが添えられている

40カ所以上の港で海洋ごみを回収

 「ECOALF(エコアルフ)」は、スペインのEcoalf Recycled Fabrics, S.L.(以下、Ecoalf)が2009年から展開するファッションブランドだ。創業者のハビエル・ゴジェネーチェ氏はサステナビリティー(持続可能性)を追求し、リサイクル素材や環境負荷の低い素材だけで作った衣服や雑貨を製造・販売している。もともとアパレルビジネスを手がけていたゴジェネーチェ氏は、子供の誕生をきっかけに、大量の廃棄物を生み出す従来のアパレルビジネスに疑問を感じるようになった。

 そこで過去のキャリアをいったん離れ、ゼロからスタートしたのがエコアルフだ。このブランドはスペイン国内にとどまらず、広く欧州で消費者の共感を得た。ベルリンやアムステルダムにも直営店を展開するなど欧州を中心に13カ国に販路を拡大。セレクトショップや専門店など取引先は600社以上にのぼるまでに成長した。

 日本では、三陽商会がEcoalfとの合弁会社エコアルフ・ジャパン(東京・新宿)を設立し、2020年に店舗展開を開始。20年3月13日、アジア初進出となる旗艦店「ECOALF 渋谷」をオープン。3月26日には「ECOALF GINZA TIMELESS 8」、5月30日には「ECOALF 二子玉川」をオープンするなど、日本でも出店を重ねている。新型コロナウイルスの感染拡大で事業計画は見直しを余儀なくされるだろうが、当初は20年度に20店舗を出店、25年度に60億円の売り上げを目指していた。4期連続の営業赤字に沈んでいる同社にとって期待の大きいブランドと言っていいだろう。20年4月14日に発表された再生プランにより、丁寧にブランド価値を伝え、エコアルフのフィロソフィーを着実に広げていく考えだ。

 「ファッションブランドでサステナブルやエコ、リサイクルといったことを前面に打ち出すと、アウトドアっぽくなったり、ナチュラルカラーやアースカラーだけで構成されたブランドになったり、どうしてもそうした固定概念や偏りが出てしまうことが多い」

 三陽商会事業本部エコアルフビジネス部企画課長の下川雅敏氏はこう指摘する。その上で、「エコアルフは、リサイクルした環境負荷が低い素材で作っているけれども、世の中に出ている一般的なファッションブランドと見た目が変わらないという点を重視し、人を選ばず誰でも普通に着こなせる、トレンドに左右されないタイムレスなデザインを目指している」という。

 一般的にリサイクル素材を使用すると、生地自体の価格は通常のものに比べ1.2~1.3倍になることが多い。しかし、エコアルフでは、自ら生地開発のシステムを構築し、計画的に商品を企画することで、コストアップを抑えている。「エコアルフの場合、自ら廃棄物の調達から素材にするまでのサプライチェーンを構築しマネジメントしている」と下川氏は説明する。

 その上で、「1シーズンで200~300型あるデザインの中で、開発した素材とそれを使用する品番を連動したマーチャンダイジングを行うことで、無駄のない素材利用の配分をしている。さらに、10年にわたるブランドビジネスの積み重ねと拡大により、量産効果も上げている」(下川氏)。このような理由で、リサイクル素材の調達コストを、通常の素材と同等かそれ以下に抑えることを可能にしているというのだ。

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 ペットボトル、漁網、タイヤなどを独自の技術でリサイクルして生地を開発しているが、中でも注目すべき取り組みが「UPCYCLING THE OCEANS(アップサイクリング・ジ・オーシャンズ)」だ。漁業を行う際に網にかかってしまった海洋ごみを港に持ち帰ってもらい、それを分別・再生して繊維に変え、衣服にしている。まさに“ごみから服を作っている”のだ。

エコアルフは海洋ごみの回収・再生プロジェクトを展開。文字通り「ごみから服を作るブランド」だ
エコアルフは海洋ごみの回収・再生プロジェクトを展開。文字通り「ごみから服を作るブランド」だ

 アップサイクリング・ジ・オーシャンズが始まったきっかけは、エコアルフの活動に興味を持った漁業組合からゴジェネーチェ氏に「漁を見にきてほしい」という要請があったことだ。漁に同行すると、海から引き上げられるごみの量にゴジェネーチェ氏は驚いた。

 それらは再び海中に投棄されるのだという。持ち帰る手間やコストをかけられないからだ。国連環境計画国際環境技術センターなどによると、1年間に約800万トンものプラスチックごみが海に流出しているという。そこで、ゴジェネーチェ氏は漁師と共同で海洋ごみを活⽤するプロジェクトを始めたのだ。

 15年9月にスペインの9つの漁港が参加して発足し、これまでに40カ所以上の港で、延べ3000人以上の漁業関係者が関わる規模に成長した。海をきれいにしながら衣類を作り、その売り上げでさらに海をきれいにするという生産サイクルが出来上がった。

 この活動はタイ王国にも広がっている。さらにエコアルフの日本進出を機に、UPCYCLING THE OCEANS JAPANというプロジェクトを発足して、国内でも海洋ゴミを回収・分別・再生し、製品化へ向けた準備を始めた。

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