コロナ禍でフードシェアリングが急成長 食品ロスを成長市場に(画像)

日本企業にとっても避けて通れない「SDGs(持続可能な開発目標)」。だが、SDGsは非常に幅広い概念で、企業としてはどう取り組めばいいのか、まだまだ手探りの状態だ。特集の第2回のテーマは、「食品ロス」。設立間もないスタートアップが、この巨大な社会課題に挑戦し、成長を遂げている。

前回(第1回)はこちら

「TABETE」のユーザーは20~40代の働く女性が中心だという。ログイン画面のこの動画では、1人の女性がお店をレスキューする流れを説明している
「TABETE」のユーザーは20~40代の働く女性が中心だという。ログイン画面のこの動画では、1人の女性がお店をレスキューする流れを説明している

 環境省によると、2017年度の日本の食品廃棄物は約2550万トン。このうち本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品(食品ロス)は約612万トンで、国民1人当たりに換算すると年間で48キログラムになるという。この食品ロスについては、SDGs(持続可能な開発目標)のターゲットの一つとして、30年までに世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させることが盛り込まれている。

 世界各国で食品業界を中心に食品ロス対策への関心が高まる中、大手小売業の英テスコや米ウォルマートを含む11社が19年9月、米シンクタンクWRI主導の「10×20×30食品廃棄物削減イニシアティブ」を始動した。主要なサプライヤーとともに食料廃棄物の半減に取り組む。このイニシアティブには国内では19年12月、イオンが参加。食品メーカーなど21社と共に取り組み始めた。

 だが、日本の食品ロスはこの数年ずっと600万トン台で推移しており、「半減」は非常に困難な目標と言えるだろう。そうした中、小さなスタートアップがこの巨大な社会課題に挑戦しようとしている。

 料理が余ってしまって捨てるしかない飲食店と、それを割安な価格で購入したい消費者をマッチングするフードシェアリングプラットフォーム「TABETE(タベテ)」がその一つだ。コロナ禍の中で注目度が高まっており、運営するコークッキング(東京・港)によると、20年1月には21万6496人だったユーザー数は、4月には25万1104人と約16%増。Webサイトに掲載されている店舗数も506軒から878軒へと1.7倍に増加した。「レスキュー」と呼ぶマッチング回数は月間1870回から同6392回と、3カ月で3.4倍に急増した。中食・外食産業において、フードシェアリングプラットフォームはコロナ禍の中で数少ない希望の光となっている。

TABETEのホームページではイラスト入りの説明も多く、気軽に「レスキュー」してみようという気にさせる
TABETEのホームページではイラスト入りの説明も多く、気軽に「レスキュー」してみようという気にさせる
スマホを使用したときの画面。現在位置から近い飲食店のレスキュー対象商品が表示されて便利
スマホを使用したときの画面。現在位置から近い飲食店のレスキュー対象商品が表示されて便利

 TABETEに出品される料理の値段は店によって異なる。出品価格は上限680円、下限250円。店側はマッチング手数料としてTABETEに1食当たり150円を支払う。初期費用とランニングコストは掛からない。

 18年4月にスタートしたTABETEは、サービスを提供するエリアを限定して、密度を高めるドミナント戦略を取っている。サービスエリアは現在、首都圏を中心に金沢・浜松・名古屋・大阪・神戸などだ。特に相性が良いのが、エキナカだという。閉店間際までなるべく品切れを起こさないようにしなければならないうえに、天候によって利用者の増減が激しいため、結果的に余ってしまう商品が多くなるからだ。

 東京駅構内では、商業施設の「GRANSTA(グランスタ)」の運営に携わる鉄道会館、JR東日本スタートアップと協業して、食品ロス削減に取り組んでいる。他には、東京農業大学の学生食堂(生協)がビュッフェで余った食材を弁当にして販売するといった施策を導入し、同時にポスターやPOPを設置して啓発を進めている。

東京駅の「グランスタ」では、ユーザー向けと従業員向けに別の施策を行った。上は従業員向けの施策で、全店舗から出た食品ロスを集め、従業員向けに販売する「レスキューデリ」
東京駅の「グランスタ」では、ユーザー向けと従業員向けに別の施策を行った。上は従業員向けの施策で、全店舗から出た食品ロスを集め、従業員向けに販売する「レスキューデリ」
東京農業大学の学生食堂(生協)でもTABETEを導入。学校という場でどう使えるかを検討している
東京農業大学の学生食堂(生協)でもTABETEを導入。学校という場でどう使えるかを検討している

「料理をレスキュー」でイメージアップ

 コークッキング代表取締役CEO、川越一磨氏は「食品ロス対策に関して、EUなどと比較すると認知度がまだ低い。宗教的、文化的な違いもあるし、飲食店と生活者との密接な関係が、日本の大都市圏では根づきにくい」と言う。「消費者がスーパーやコンビニの閉店間際の割引セールで購入する行為に対して、格好良くないというイメージを持っている」(川越氏)という点も、乗り越えなければいけない課題だ。

 「日本の消費者に、フードシェアリングサービスに親近感を持ってもらうためには、サービスを翻案する必要があると考えた」と川越氏は言う。それが、サービスにストーリー性を持たせることだった。「食品ロスとなってしまいそうな料理を、食べ手(=TABETE)がヒーローになって助ける」というストーリーだ。だから、TABETEで購入することを「レスキュー」と呼んでいるのだ。

 川越氏は、飲食店と、困ったときに助けてくれる消費者とのコミュニティーをつくりだすことを目指しているという。

新型コロナウイルスに対する特別な措置を取った。期間限定の「レスキューパス」も発行し、購入時に入力すると表示価格よりさらに100円割引になる
新型コロナウイルスに対する特別な措置を取った。期間限定の「レスキューパス」も発行し、購入時に入力すると表示価格よりさらに100円割引になる

 TABETEは20年4月、新型コロナウイルスの感染拡大に対応し、全国の飲食店が登録可能な「お店もレスキュー!プロジェクト」を始めた。このプロジェクトでは、存続の危機に陥った飲食店を対象に、食品ロスにこだわらず、出品できる。初期費用も変わらず無料だ。

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