今、最も売れている輸入車は、ドイツ・フォルクスワーゲンの「ゴルフ」やメルセデス・ベンツの「Cクラス」ではなく、独BMWグループの「MINI」シリーズだ。2020年4月~21年3月にも2万837台を販売し、16年度から5年連続で車名別の輸入車1位を獲得している。基本コンセプトを変えずに販売を伸ばしている理由を探る。
日本で最も売れている輸入車と言えば、長らく独フォルクスワーゲンの「ゴルフ」だった。しかしこの5年間は、英国車ブランドである「MINI」が、車名別の新車登録台数で首位の座を不動のものとしている。現在のMINIシリーズが日本に投入され始めた2002年からトップ5の常連ではあったが、ここ数年でさらに伸ばせたのはなぜだろうか。
MINIの原点は、英ブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)が、1959年に送り出した小型大衆車だ。この“クラシックMini”は、改良を加えながら2000年まで生産が継続されたロングセラーで、日本でも一定の人気があった。英国の自動車メーカーの再編の末、1994年に独BMWが買収する。そのBMWはMINIを、英国製のプレミアムコンパクトカーへと生まれ変わらせ、2001年より市場に投入した。これが現在のMINIの歴史の始まりだ。
02年の日本導入時からMINIに携わるビー・エム・ダブリュー MINIディビジョン セールス・マネージャーの山口智之氏は、クラシックMiniの時代から日本とMINIは相性が良かったと指摘する。「クラシックMiniが日本で最も売れたのは1990年。一方で、英国など他国は次世代コンパクトカーにシフトしており、クラシックMiniは古臭いクルマだと思われていた。1990~2000年の生産分は、ほとんどが日本向けだったといってもよいほど、クラシックMiniは日本人に愛されていた」(山口氏)
現在のMINIの購入層も、1990年前後にクラシックMiniに憧れていた50~60歳代が意外と多い。購入者の平均年齢は40代半ばだが、年代別では50代、30代、60代の順になるのだ。50歳以上の多くはミニバンなど大きめのクルマが不要になった子離れ世代であり、特に都市部の居住者は小型車を好む傾向にある。生活に余裕がある世代では、安価で実用的なクルマよりも個性的なクルマを選びたいという趣向も強い。こうした理由で、「今こそMINI」と考える人が多いというのだ。
MINIは小型車としては高級車だが、他の高級車のような威圧感や押し出しの強さとは無縁で、親しみを感じやすいブランドだ。英国の国民車として活躍し、愛されてきた伝統のデザインを残しているからだろう。そして、小さく愛らしいクルマが好きな日本の国民性とも親和性が高い。価格帯が税込み273万円からと、背伸びすれば手が届く範囲にとどめられている点も大きいだろう。
またMINIは、カスタマイズパーツが豊富なのも特徴の一つ。「3ドア」モデルのホイールだけでオプションパーツカタログには20種類以上もある。ミラーや屋根にステッカーを貼るなど、多彩な装飾で自分だけのMINIをつくることができる。実際、オプション品を購入する人は、BMW車よりもMINIの方が多いという。自分好みの1台をつくれば、愛着も湧くというもの。この辺も熱心なファンの拡大につながっている。
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