ニコンが2021年7月23日に発売した、レンズ交換式カメラ「Z fc」が、販売台数ランキングで一時3位に入るなど、同社の一眼カメラでは久しぶりのヒットを飛ばしている。一見すると、単なるクラシックな外観のカメラだが、その裏には中高年以外に若年層にも訴えかけるための入念な「つくり込み」があった。

ニコン「Z fc」。実勢価格はボディーのみで12万9800円(税込み)。「16-50 VR SLレンズキット」は14万9600円(同)
ニコン「Z fc」。実勢価格はボディーのみで12万9800円(税込み)。「16-50 VR SLレンズキット」は14万9600円(同)

 一眼レフカメラでは業界2位のシェアがありながら、ミラーレスカメラでは影が薄かったニコンが、21年7月23日発売の「Z fc」で久々にヒットを飛ばしている。発売直後の21年7月19~25日の「BCNランキング」では、ミラーレス一眼カメラの実売台数ランキングで3位を獲得。予約が殺到した影響で「28mm f/2.8 Special Edition キット」の発売を延期したにもかかわらず、その後も堅調に推移している。

 ニコンでZ fcの商品企画を担当した映像事業部UX企画部UX企画一課のハウ・ネルソン氏も、「当初の想定以上に売れていて、一部の店舗では在庫切れになってしまったほど。また、ニコンのカメラとしては、SNSでの評判が過去最高レベルに高いと感じている」と手応えを語る。

 では、なぜZ fcはそれほど売れているのか。その外観を見れば、クラシックカメラ風のデザインが魅力の一つであることが分かる。しかし、クラシカルなカメラは、OMデジタルソリューションズの「OLYMPUS PEN」や「OM-D」シリーズ、富士フイルムの「Xシリーズ」など、競合が複数ある分野。それらの中で改めてZ fcが注目されたのは、ニコンが「新たな写真の撮り方」を提案しつつ、70年以上ある同社カメラ製造の歴史をうまく利用したからだと言える。

 Z fcは、19年に発売された同社の入門者向けミラーレスカメラ「Z 50」をベースに、新たなコンセプトの製品として開発された。その背景には、スマホに押されてカメラの販売が大きく落ち込んでいる事実がある。19年までの数年間でカメラの国内販売台数は毎年2割ずつ減っており、20年はコロナ禍でさらに減少が加速した。特にコンパクトカメラは10年前の10分の1の規模まで落ち込んでいる。

 ハウ氏は「Z 50は、写真を速くきれいに撮影する道具としてのカメラ。ただ、そのような既存のカメラはスマホと競合しやすい。そこで、若者のライフスタイル(生活様式)に融合しつつ、撮る楽しさが伝わるカメラをつくりたいと考えた」と、Z fcのコンセプトを解説する。

 そこで出てきたのが、約40年前の1982年に発売した「Nikon FM2」をモチーフにするというアイデアだ。この時代のカメラは現在のニコンのミラーレス一眼と違ってグリップが出っ張っていないので、女性の小さなバッグにも収めやすい。また、設定用のダイヤルを増やすのも自然にできる。

 「1970年代のニコンでは『Nikon F2』や『同F3』などの一眼レフカメラが主力だったが、高価で一般の人には手が出なかった。そこで、写真文化を広めるために『コンパクト・ニコン』のコンセプトで77年に発売されたのが『Nikon FM』。その後継機のNikon FM2は、一般向けでありながらストロボとの同調最高速度が200分の1秒と、当時の最高性能を備えており、プロにも多く買っていただいた。最新の技術を若年層に伝えるのにこのヘリテージ(遺産)が使えると思った」(ハウ氏)

1982年発売の「Nikon FM2」
1982年発売の「Nikon FM2」

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