以前から、他社との積極的なコラボレーションで知名度を上げてきたエヴァンゲリオン。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の興行収入100億円達成の裏には、そうしたコラボをさらに進化させ、新規ファンをつかむという地道なマーティングがあった。コロナ禍で公開が2度延期になる逆境でも、他社を巻き込んで成功した事例を紹介する。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開後の盛り上がりをつくった、従来とは違うビジネス戦略は幾つかある。「TikTok」でのライブ開催や「pixiv」とのコラボがその例だ。
動画SNSのTikTokでは、2021年4月10日に「高橋洋子公式兼期間限定映画オフィシャルアカウント」からスペシャルライブ、トークライブが行われた。テレビシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌「残酷な天使のテーゼ」を歌う高橋洋子によるスペシャルライブや、高橋と主人公・碇シンジ役声優の緒方恵美によるトークシリーズだ。動画テロップに使える「エヴァ フォント」、エヴァキャラになれるエフェクトなども期間限定で実装した。
「みんなで作品の要素をエッセンスにして遊んでもらうのが趣旨。下は小学生から大学生くらいまで、『エヴァ』を見たことが無い層も囲い込んでお祭り騒ぎをしました。気力は必要ですが、原資をかけずに公開後の盛り上がりをつくれました」(島居氏)
pixivでファン投稿が盛り上がる
イラスト投稿サイトのpixivでは、21年3月12日から5月31日まで『エヴァンゲリオン』バトルイラストコンテストを実施。イラストを投稿し、敵と戦うバトル形式のイラスト投稿企画だ。さらに、お絵かきコミュニケーションアプリ「pixiv Sketch」でも塗り絵企画を開催した。
「作品で遊んでもらおうという試みは新しいわけではなく、『エヴァ』は、ファンアートを世界で最初に公式が認めたコンテンツ」と、神村氏は言う。
インターネットが普及を始めた1997年頃には既に、「ファン個人のサイト上で自作のイラストをアップするのは商用利用でなければOK」というガイドラインを示している。「当時はTikTokやpixivのようなプラットフォームが無かったので。今回、改めてファンアートのガイドラインを作成しました」(神村氏)
pixivのバトルイラストコンテストは、『エヴァ』シリーズをテーマに、投稿者が自由にイラストを投稿する。「絵を描く人だけでなく、閲覧者も一緒になって、共通の敵を倒して全ステージクリアを目指すバトル形式のイベントにしました」と、ピクシブの濱吉玲奈氏。3月12日の初日だけで投稿数は約400。4月末には3000作品を超えている。

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