2021年2月に発売されたゲームソフト「リトルナイトメア 2」(バンダイナムコエンターテインメント)が、発売1カ月足らずで世界100万本のヒットを記録した。せりふは一切無く、「悪夢のようなゲーム」と形容したくなるような斬新なジャンルの不思議なゲームは、なぜ売れているのか。

「リトルナイトメア 2」通常版:3960円(税込み。ダウンロード版同価格)、デラックスエディション:5280円(税込み。ダウンロード版のみ/PS4、PCのみ)、スペシャルエディション:4730円(税込み。ダウンロード版のみ/Nintendo Swichのみ)、リトルナイトメア1+2 バンドルエディション:5940円(税込み。ダウンロード版のみ/PS4のみ)
「リトルナイトメア 2」通常版:3960円(税込み。ダウンロード版同価格)、デラックスエディション:5280円(税込み。ダウンロード版のみ/PS4、PCのみ)、スペシャルエディション:4730円(税込み。ダウンロード版のみ/Nintendo Swichのみ)、リトルナイトメア1+2 バンドルエディション:5940円(税込み。ダウンロード版のみ/PS4のみ)

 「リトルナイトメア 2」は、スウェーデンのゲーム会社・Tarsier Studiosが開発し、バンダイナムコエンターテインメントが発売するサスペンスアドベンチャーゲーム。PlayStation4やNintendo Switch、PCなど幅広いハードに対応する。2017年に発売された第1作が全世界500万本のヒットを記録したのに続き、21年2月に発売された第2作となる本作は、バンダイナムコエンターテインメントヨーロッパが主導したタイトルでは初めて、発売1カ月足らずで販売100万本を突破した。

 そんなリトルナイトメア 2は、「悪夢のようなゲーム」と形容したくなる斬新なジャンルのゲームだ。ただし、基本構造は昔ながらの横スクロールゲームに近い。途中にある様々な罠(わな)や、襲ってくる敵の目をかいくぐって進んでいくだけだ。

 「悪夢のような」と形容したくなる理由は、モノクロに近いトーンでぼんやりと描かれるゲーム画面にある。ここが現実なのか、それとも架空の世界なのか明示されないままゲームは進んでいく。何しろこのゲーム、セリフが一切存在しない。それどころかボタン操作を解説するためのものを除くと、文章すら一切表示されないという徹底ぶりだ。

ゲーム世界は、そこが現実なのか夢の中なのかすら判然としないテイストで描かれる
ゲーム世界は、そこが現実なのか夢の中なのかすら判然としないテイストで描かれる
どれだけゲームを進めても、どこまでも不気味で不穏な雰囲気が漂い続ける
どれだけゲームを進めても、どこまでも不気味で不穏な雰囲気が漂い続ける

 世界全体がぼんやりと描かれるため、プレーヤーは自然と明るい方へと進みたくなる。この「明るい方が安心できる」という人間の心理を利用し、プレーヤーは正解のルートへと導かれていく。いずれ、ぼんやりと描かれた世界の中で、ちょっとだけ目立つように配置されたギミックに目がいくようになり、「このひもは登れそうだ」「このアイテムは押せそうだ」と分かってくる。

 基本的には右へ進めばいいという横スクロールゲームの伝統を踏襲しているため、何も説明が無くても、世界中のプレーヤーは「どうすればいい?」と悩むことなくゲームが楽しめるのだ。それをうまく活用して、全く言葉に頼ることなく、プレーヤーにヒントを与えていくゲームデザインが抜群にうまい。うす暗いグラフィックが持つ特徴を巧みに利用しているのは称賛に値する。

とにかく右へ進むだけ。この場面なら、明かりに誘われるように建物へと進んでいけばいい
とにかく右へ進むだけ。この場面なら、明かりに誘われるように建物へと進んでいけばいい
進む先がぼんやりと明るくなっている。この浮いたベッドを足場に進めばいいと分かる
進む先がぼんやりと明るくなっている。この浮いたベッドを足場に進めばいいと分かる

欧州発「悪夢のようなゲーム」に脚光

 リトルナイトメア 2に代表される「悪夢のようなゲーム」が、実は静かなブームになっている。とりわけ欧州のゲームスタジオから、同タイプの秀作が出てくる傾向にある。

 その契機となったのが、10年にリリースされた「LIMBO」というデンマーク発のゲームソフト。影絵のように描かれるモノクロの世界を右へ右へと進んでいくゲームだ。リトルナイトメア 2と同じく、せりふが全く無く、ストーリーが判然としないまま展開する。不気味なのに幻想的、そして面白いと世界のゲームファンを驚かせ、隠れた名作として有名になったソフトである。

 LIMBO以降は、「クリエーターの頭の中にある悪夢」をそのまま舞台にしたような優れたゲームが多く作られるようになっている。リトルナイトメアも、そんなムーブメントが生み出したソフトと言っていい。映画に例えるとすれば、ハリウッド大作を目指すのではなく、ベネチアやカンヌの映画祭で称賛を浴び、一躍世界へ名を知られるようになった傑作であると言える。

子供にとっての「悪夢」がよみがえる舞台設定

 リトルナイトメア 2の秀逸なポイントとしては、主人公が子供であることも挙げられる。

 力の弱い子供だから、戦うことはできない。一般的なロールプレイングゲームのように現れた敵と戦うのではなく、ひたすら逃げるしかない。足音を立てぬよう歩き、物陰に隠れ、ひとたび見つかれば一撃でゲームオーバーになる恐怖と隣り合わせの冒険が続く。

 大人なら簡単に開けることができるドアも、小さな子供だからドアノブに手が届かず逃げられない。大人なら越えられる段差も、子供にとっては越えられない壁になる。普通に家具が配置されているだけの家屋が、主人公にとっては知恵を絞らなければ突破できない悪夢のようなダンジョンになる。

 そこに登場し、冒険を邪魔するキャラクターたちも悪夢そのものだ。理由もなく襲ってくるおじさんに、理不尽なまでにサディスティックな教師など。誰もが子供の頃に「怖い」と感じていたものが、主人公を襲うキャラクターとして登場する。このためプレーしていると、子供の頃に感じていた「怖い」「嫌だ」「不穏だ」といった感情がよみがえってくる感覚に襲われ、ゲーム世界に引き込まれていく。とびきり上質のサスペンスが楽しめるのだ。

 これは、きっと全世界の人たちが、それぞれの文化や宗教を超え、みんな共通して持っていた感覚なのだろう。だからこそ、クリエーターの頭の中にある悪夢を再現したような、極めて作家性の強いゲームであるにもかかわらず、全世界のゲーマーの心をつかんだのだ。

ヒステリックな教師。彼女の目を盗んで進んでいくしかない
ヒステリックな教師。彼女の目を盗んで進んでいくしかない
いきなり襲いかかってくる子供もいる。凶悪ないじめっ子である
いきなり襲いかかってくる子供もいる。凶悪ないじめっ子である
時には2人で協力し、谷を越えていく。落ちると一発でアウトになる
時には2人で協力し、谷を越えていく。落ちると一発でアウトになる
図書室。敵キャラクターに見つからないよう、逃げ続けるしかない
図書室。敵キャラクターに見つからないよう、逃げ続けるしかない
右へ右へと進んでいった先には何が待っているのか……?
右へ右へと進んでいった先には何が待っているのか……?

Little Nightmares (R) II & (C) BANDAI NAMCO Entertainment Europe.
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