軽自動車メーカーのイメージがあるスズキの小型ハイトワゴン「ソリオ」が、2020年12月のモデルチェンジ後、販売台数で一時トップ10入りするなど好調だ。「ソ・ソ・ソリオ」のテレビCMも話題となったが、その本質はコスパの高さ。価格を抑えつつ乗り心地や荷室などを改善し、利用者拡大につなげたモデルチェンジを振り返る。

2020年12月発売の新型「ソリオ」。排気量は1.242リットル。価格は158万1800~214万8300円(税込み)(写真提供/スズキ)
2020年12月発売の新型「ソリオ」。排気量は1.242リットル。価格は158万1800~214万8300円(税込み)(写真提供/スズキ)

 日本を代表する軽自動車メーカーのスズキから、意外にも普通自動車(登録車)のヒットが生まれている。同社は、コンパクトカーやSUV(多目的スポーツ車)など約10車種の登録車を販売しているが、その中で最も売れているのが小型ハイトワゴンの「ソリオ」だ。2020年12月にモデルチェンジした4代目は、月販目標4000台に対して、月平均で約5000台をキープ。21年4月には登録車の販売台数でトップ10入りも果たしている。

 昨今はトヨタ自動車以外でトップ10に入るクルマは2~3種類というのが一般的なので、これは大健闘だと言える。同社のラインアップの中でも、クロスカントリー車の「クロスビー」やスポーティーな「スイフトスポーツ」などに比べると地味なソリオが、なぜ人気車となれたのだろうか。

 最大の理由はキャッチーな曲のテレビCMではなく、ソリオが実用性を追求したコストパフォーマンスの高いクルマだからだ。その原点は、1993年発売の軽ハイトワゴン「ワゴンR」に遡る。このワゴンRは、僅か3年2カ月で50万台以上を売り上げた当時の大ヒット車種。この成功を受けてスズキは、軽自動車の枠を超えて一回り大きくした5人乗りの「ワゴンRワイド」を97年に投入した。

 軽自動車には、ボディーサイズや乗車定員(最大4人)などに制限があるが、登録車にすれば余裕が生まれる。ワゴンRワイドは、小さなワゴンRの運転しやすさはそのままに、少しゆとりあるクルマとして提案された。結果的にはワゴンRほどは売れなかったが、軽ハイトワゴンと7人乗りミニバンの中間的な「小型ハイトワゴン」という新ジャンルを創出できた。

1997年2月発売の「ワゴンRワイド」。排気量は1リットル(写真提供/スズキ)
1997年2月発売の「ワゴンRワイド」。排気量は1リットル(写真提供/スズキ)

 これが99年には、軽自動車の拡張ではなく最初から小型登録車として開発された「ワゴンR+」(「+」は正しくは上付き)に進化。2000年には名前が「ワゴンRソリオ」(05年から「ソリオ」)となり、ソリオの歴史が始まる。その後、10年12月に左右のスライドドアを搭載して使い勝手もミニバン並みとなり、現在につながる形になった。

1999年5月発売の「ワゴンR+」。排気量は1リットル。当時の価格は117万8000~150万5000円(税別)(写真提供/スズキ)
1999年5月発売の「ワゴンR+」。排気量は1リットル。当時の価格は117万8000~150万5000円(税別)(写真提供/スズキ)
2000年12月発売の「ワゴンRソリオ」。排気量は1~1.3リットルで、まだスライドドアは搭載されていない。当時の価格は107万8000~145万5000円(税別)(写真提供/スズキ)
2000年12月発売の「ワゴンRソリオ」。排気量は1~1.3リットルで、まだスライドドアは搭載されていない。当時の価格は107万8000~145万5000円(税別)(写真提供/スズキ)

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