バッファローが2021年4月に発売したネットワークレコーダーの「nasne」の出足が好調だ。アマゾンのネット販売では、入荷するたびに1日で売り切れる現象が何度も起きている。バッファローもこの品薄は予想外だと語る。その人気の裏には、「継承」を意識した製品開発と、機械学習を用いたユニークな価格決定プロセスがあった。
バッファローのネットワークレコーダー「nasne(ナスネ)」は、アマゾンでこれまで受注のアナウンスを8回したが、いずれも24時間以内に完売している。これは、AV家電に詳しい人にとっては意外かもしれない。それは、nasneが9年前の2012年からある製品で、今でもできることはほとんど変わっていないからだ。また、そもそもnasneを開発したのはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)で、19年に出荷が終了している。つまり1度は終わった製品なのだ。
バッファロー版のnasneが成功した理由を一言でいえば、販売終了で困っていたSIE版nasneの利用者を残さず捉えた上で、テレビ視聴形態の変化に伴って増えた需要を掘り起こすことができたからだ。
その理解のためには、どこがnasneならではの特徴かを把握しておく必要がある。nasneは、ネットワーク経由でテレビ放送を視聴・録画するレコーダーの一種だ。テレビチューナーと録画用のハードディスクを内蔵し、さらにLAN端子を備える。これを家庭のテレビアンテナとWi-Fiルーターなどに接続すると、パソコンやスマホなどでテレビ番組を視聴・録画・再生できる。専用アプリをインストールしていれば、自宅だけでなく外出先でも視聴可能。タブレット(Android、iPad)や「PlayStation 4」も利用できる。
12年当初はスマホ視聴自体が画期的だったが、2~3年後にはパナソニックの「DIGA」シリーズや、東芝映像ソリューション(現・TVS REGZA)の「レグザブルーレイ」などのブルーレイレコーダーも、似た機能を搭載し始めた。それでもnasneは、専用のスマホ・タブレット用アプリ「torne mobile」に、番組中の⾒たいシーンを探す機能が豊富にあることに加え、動作が滑らかであるといった特徴があり、根強い人気があった。
しかしSIEは、19年6月にウェブサイト上でnasneの「近日出荷完了予定」を突然アナウンスした。その直接の理由は、それまでのnasneで使われていた一部の部品が、ある半導体メーカーの撤退によって調達できなくなったことにある。nasneの売り上げが以前より減っていたこともあり、SIEは後継機を開発しないという決断を下した。
しかし、軽快に動作するnasne以外は考えられないという人は多く、Twitterには「困る」「どうしよう」と、販売終了に困惑する声が相次いだ。故障などに備えて最後の在庫を購入しようとする人も多く、直前まで税込み2万4200円ほどだったnasneの実勢価格は同3万~4万円に急騰した。
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