1万円を超えるプレート型のトースターが売れている。シンプルに見えるが、使われている炭素素材のおかげで「パンが絶品の味に仕上がる」と評判だ。作っているのは神奈川県綾瀬市の老舗町工場。開発者たちに話を聞いた。
その価格は税込み1万1000円。一見、何の変哲もなく割高に思えるプレート型のトースターの月産台数は、現在約200個が限界。2020年12月の発売以降、それが作った端から飛ぶように売れていく。工業用カーボン加工を専門にしている老舗町工場発のヒット商品だ。
コンロやIHヒーターに直接載せてパンを焼く「Sumi Toaster(スミトースター)」は、見た目はただの黒い角皿のよう。しかし、これで焼いた食パンが、とてもおいしいと評判なのだ。その秘密はカーボングラファイトと呼ばれる、99.9パーセントが炭素でできた塊を削り出して作られているから。カーボングラファイトの原料は石炭コークスで、高温で長期間焼き続けて作られる。
「Sumi Toasterの調理効果は炭火焼きと同等。遠赤外線効果によって食品が中から温まり、水分を逃がさず、香ばしく焼き上げてくれる」と、同製品を製造する旭工業(神奈川県綾瀬市)の代表、嶋知之氏。製品そのものは綾瀬市と同市の企業による共同プロジェクト「あやせものづくり研究会」のブランドで商品化されていて、旭工業が製造している。
これまで、パンを焼く炭素系素材の調理器具は無かった。しかも削り出して作るために継ぎ目が一切無く、熱の通り方が均一になる。削り出す手間がかかっているぶん高価ではあるものの、手軽な“炭火焼き”によっておいしいトーストが出来上がるのだ。
「炭火焼きは火をおこすのが大変なうえ、最高で1000度に達するため火加減も難しくて焦がしやすい。Sumi Toasterは大体200度なので、簡単に焼ける」と嶋氏は言う。実は、この製品が生まれたきっかけの1つが、嶋氏自身がバーベキュー好きにもかかわらず、炭の火おこしが苦手だったことだ。
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