アジア生まれのBL(ボーイズラブ)ドラマが2020年から話題沸騰中だ。Twitterの世界トレンド1位を獲得し、動画の総再生回数が億を超えた作品も出現。動画配信サービス・Rakuten TVの20年「年間総合ランキング」では10作品中6作品をアジアBLドラマが占拠した。近年の爆発的人気に迫る。

「2gether」
「2gether」
アジアBLドラマブームの火付け役。タインが徐々にサラワットに引かれていく感情の変化が丁寧に描かれる (c)GMMTV COMPANY LIMITED, All rights reserved

 男性同士の恋愛模様を描くBL(ボーイズラブ)。一部の熱狂的なファンが支持し続けてきた市場だが、2020年はアジア生まれのBLドラマが爆発的ヒットとなった。国内でも18年に放送されたドラマ「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)や「ポルノグラファー」(フジテレビ系)の影響でジワジワと人気が広がっていたが、今回のBLドラマブームの火付け役となったのは国内で制作された作品ではなく、タイ・韓国・台湾といったアジア圏の作品だ。

 楽天が運営する動画配信サービス・Rakuten TVは、特にBLドラマの配信に強みを持つが、同サービスについても、“BLドラマ元年”といえる年になったのが20年だった。Rakuten TVアジアドラマ買い付け・調達担当の金京恩氏は、「購入者数が19年から20年でおよそ7.7倍に増加した」と言う。しかも、「20年は10代、20代、60代のユーザーが19年と比較して約10倍にまで伸びた」(金氏)。

 視聴者はこれまで30~40代の女性が中心だったが、他の年齢層からの支持が広がり、BLドラマにこれまであまり興味を示してこなかった「ライト層」にまで人気が拡大しているのだ。

 ではなぜ、20年はこれほどまでにアジアBLドラマへ注目が集まったのか。大きなきっかけとなったのが、タイBLドラマ「2gether(トゥギャザー)」の出現だ。大学生のタインが同級生のサラワットへ「偽装彼氏」を依頼したことをきっかけに恋愛関係へ発展していくラブストーリーで、20年2月にタイ本国で放送開始後、瞬く間に火が付きTwitterの世界トレンドで1位を獲得。タイの優れたエンターテインメントコンテンツを表彰する「MAYA AWARDS2020」でも、最も人気を博したドラマに贈られる「今年のベストシリーズ賞」を受賞した。

 本国でのドラマ配信当時、日本では未放送・未配信だったが、YouTubeで無料公開されていた英語字幕版(現在は非公開)を見た日本の視聴者がTwitterへ感想を投稿。口コミから一気に知名度を上げ、カルチャー誌への掲載やテレビでの紹介などメディア露出も増加した。Rakuten TVでも、20年7月の配信開始から僅か3カ月足らずで年間総合ランキング首位を獲得。21年6月には、この「2gether」と、スピンアウト特別編の「Still 2gether」の要素に撮り下ろし要素も加えた映画の公開も決まっている。

『2gether THE MOVIE』 21年6月4日全国公開 配給: アスミック・エース (c)GMMTV
『2gether THE MOVIE』 21年6月4日全国公開 配給: アスミック・エース (c)GMMTV

 金氏は、「2gether」が一大ヒットになった大きな理由の一つとして、「主人公2人のビジュアル」と分析する。メディアに取り上げられる機会が増えていく中、「こんなイケメンの出ているドラマって?」というフックがあることが、ライト層を呼び込みやすくした。

 「『2gether』はコメディータッチの学園ドラマという王道な設定。一方で最初から分かりやすくBLとして描かれているわけではなく、様々な出来事を経て主人公の1人がもう1人の主人公へと徐々に引かれていく過程が丁寧に描かれている。過激な描写も無く、きれいでソフトなシーンが多いため入門編として最適な作品」(金氏)。

Rakuten TVアジアドラマ買い付け・調達担当の金京恩氏。人気BL小説『タクミくんシリーズ』の実写映画化(07年以降に5作品が公開)から実写BLコンテンツに注目
Rakuten TVアジアドラマ買い付け・調達担当の金京恩氏。人気BL小説『タクミくんシリーズ』の実写映画化(07年以降に5作品が公開)から実写BLコンテンツに注目
「2gether」の主人公
「2gether」の主人公
左:タイン・ティパコーン役はメータウィン・オーパッイアムカジョーン(ウィン)が演じた。右:サラワット・ガンチタノン役はワチラウィット・チワアリー(ブライト)が演じた コンテンツセブン/(c)GMMTV COMPANY LIMITED, All rights reserved

 アジアBLドラマの20年の人気過熱ぶりは、Rakuten TV年間ランキングの推移からもすぐ分かる。Rakuten TVは17年、台湾ドラマ「HIStory」シリーズを皮切りに、アジアBLドラマの配信を開始。19年にもタイドラマ「SOTUS/ソータス」や中国ドラマ「ハイロイン」など人気作を配信し続け、BLファンからの支持を徐々に集めてきたプラットフォームだ。

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