トヨタ自動車の高級SUV「ハリアー」が、コロナ禍で自動車販売が厳しい状況にありながら、2020年6月の発売以降、6万台以上を売り上げて販売台数トップテンの常連になっている。大きなキャラクター変更をせず、「ハリアーらしさ」を生かした販売戦略を自動車ライターの大音安弘氏が解説する。
2020年6月に7年ぶりにフルモデルチェンジしたトヨタ自動車の多目的スポーツ車(SUV)である「ハリアー」が好調を維持している。月販目標は3100台だったが、発売1カ月で約4万5000台という驚異的な注文台数を記録。販売が本格化した20年7月以降の平均販売台数は月約8720台で、8カ月間6位以上をキープしている(最高順位は4位)。21年に入っても勢いは続き、2月も8006台(5位)を記録。ハリアーの価格帯は299万~504万円(税込み)と、国産車としては高価にもかかわらず売れているのだ。
ハリアーは4代目となるが、コンセプトが変わらないのに20年以上も一定の人気を保ち続ける珍しいクルマだ。それは、ハリアーが日本のファンを中心に意識してつくられたからだと言える。それはどういうことか。理由を知るために、まずは歴史をひもといてみよう。
初代ハリアーは1997年12月にデビューした。当時は「SUV」という呼び名が根付く前であり、トヨタは「スポーツ ユーティリティ サルーン」と表現し、新ジャンルの高級車として送り出した。この頃のSUV市場は、「クロスカントリー(クロカン)」と呼ばれる本格志向の4WD車に加えて、街中での使用を重視した「クロスオーバー」と呼ばれるカジュアルなモデルがようやく登場したばかり。街乗りを前提とした、4輪駆動をマストとしない高級SUVは存在しなかった。
つまりハリアーは、「高級なSUV」ではなく、「SUVの形をしたセダン」というイメージの車種だったのだ。それでいて現在のSUVのように多目的に使える走行性能があり、豪華な装備と快適な車内空間を備えていた。これがヒットし、98年末までの1年強で5万980台を販売。米国でも「レクサス RX」として投入され、世界的に「都市型の高級SUV」というジャンルを開拓していった。
03年には、初代の意匠やイメージを継承(キープコンセプト)した2代目が登場。時代のニーズに応えて、ハイブリッド仕様も05年に追加されている。この2代目もヒットして、国産高級SUVとしての不動の地位を確立し、当時のトヨタ販売店での花形車種へと成長。04年には、2代目レクサス RXとして米国でも展開された。
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