2020年10月、脚の負担を減らしてこげる今までにない国産自転車が登場する。世界初となる新型クランクを搭載した自転車「Root One」がそれだ。サイクルオリンピック(東京都国分寺市)が開発した。ショートクランクと、ギアに内蔵されたシリコンの反発力を推進力にするという世界初の革新的なギアクランクシステムが自転車業界の歴史を変えようとしている。

2020年10月に発売する「Root One」
2020年10月に発売する「Root One」

妥協しない自転車を

 サイクルオリンピックが開発したRoot Oneのコンセプトは、「歩くように走る」。最大の特徴は、クランクの短さにある。通常の自転車の場合、クランクは165~170ミリメートルで地面と近く、こぐときには大きく脚を動かさなければならない。一方Root Oneのクランクは長さが140ミリメートルと短い。

 両側を合わせると5~6センチメートルほど脚の可動域が小さくなり、結果として無駄な上下動がなくなる。より脚の負担が減らせるわけだ。ほかにもクランクの短さから重心が低くなり、低速走行時や停車時でもバランスを崩しにくくなる利点もある。

一般的な自転車に比べて短いクランクのおかげで停車時でもバランスを崩しにくい
一般的な自転車に比べて短いクランクのおかげで停車時でもバランスを崩しにくい

 ショートクランクの自転車は長年多くのメーカーが研究してきた。ただ、推進力が弱くなる点が問題だった。その弱点をカバーしたのが、FREEPOWER(宮崎市)と共同開発したアシストギア「Free Power(フリーパワー)」だ。サイクルオリンピックの直営店舗では、電動アシスト自転車とフリーパワー搭載自転車の売れ行きはほぼ同じだという。「フリーパワーがあったからこそ、Root Oneを作ることができた」と、古屋直隆社長は言う。

 フリーパワーの仕組みは、チェーンにつながる内側のギア(内部回転体)と、クランクにつながる外側のギア(外部回転体)にシリコンを挟むというもので、世界初となる構造だ。踏み込んだ力でシリコンが圧縮し、その反発力を自転車の推進力に変換する。クランクが短くなったことで周径が小さくなるが、踏み込む力を確実に推進力に変換してくれる世界に類を見ないショートクランクの自転車を作ることができた。

 世界に類を見ない新型クランクは、4つの特徴がある。(1)シリコンがギアの回転に勢いをつけるため、脚への負担が最も大きいこぎ出しが軽くなる、(2)脚にかかる衝撃をシリコンが吸収し、ひざや脚の筋肉にかかる負担を軽減する、(3)シリコンが踏み込む力を効率よく回転に変換するため坂道や長距離の走行に強い、(4)シリコンがギアの回転をアシストして速度を持続し、加速性能もアップする——だ。

2枚のギアにシリコンを挟んだ世界初の構造
2枚のギアにシリコンを挟んだ世界初の構造

 サイクルオリンピックはフリーパワーを搭載したRoot Oneを開発するにあたり、下半身だけでなく上半身の力をも利用する設計を採用した。左右並行のハンドルをサドル側に傾け、サドルの位置をペダルより後方に移した。ハンドルを後ろに引っ張るように持ち、姿勢をまっすぐに保ったままペダルをこぐ。ボートをこぐような姿勢で自転車をこぐことで上半身の力も推進力に変えることができるという。

ボートを漕ぐような姿勢で上半身の力も推進力に転換できる
ボートを漕ぐような姿勢で上半身の力も推進力に転換できる
左右並行のハンドルをサドル側に傾けてあり、後ろに引っ張りやすい
左右並行のハンドルをサドル側に傾けてあり、後ろに引っ張りやすい

 サイクルオリンピックの古屋社長は、「自転車の歴史はスピード追求の歴史。クランクを長くして踏み込む力を大きくすることで推進力を出し、前かがみになって空気抵抗を抑えることで速く走れるように設計してきた。ただその設計を無理やりタウンユースに押し込めた今のママチャリは、体を正面に向けたまま無駄に脚を大きく動かさなくてはならず負担が大きい。妥協の産物だ」と断言する。

 Root Oneはスピード走行はできないものの、何より姿勢をまっすぐ保てるため視界が広く安全で街を走行するには十分だ。少ない力で快適に走れるため、長距離サイクリングでも疲れない。コロナ禍で需要が増える自転車通勤にも最適だろう。

 変速ギアの種類によって6万5000円(税別)と7万円(同)のモデルをラインアップする。すべて国内の職人の手で仕上げるメイドジャパンモデルもあり、こちらは23万円(同)だ。

すべて国内の職人の手で仕上げるメイドジャパンモデルの「S10」
すべて国内の職人の手で仕上げるメイドジャパンモデルの「S10」

 世界初となる構造の自転車のため、パーツもすべてオリジナルで高額になるのがネックだというが、古屋社長は「今後の売れ行きをみてコスト面も改善していく。Root Oneは今までの自転車を否定する自転車。将来的にはRoot One1本に絞ることも視野に入れている」と、自身作に期待を込める。

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