トヨタの多目的スポーツ車(SUV)「RAV4 PHV」が、「年間の生産予定台数を超えた」との理由で、発売後約3週間で受注停止になった。過去にヒットの例がないプラグインハイブリッド車に、人々が殺到したのはなぜか。そこにはトヨタが読み切れなかった複合的な背景がありそうだ。
トヨタ自動車が2020年6月8日に発売した新型多目的スポーツ車(SUV)の「RAV4 PHV」が、発売から約3週間で受注停止になり、注目を浴びている。トヨタ広報部によれば、受注数が20年内の生産予定台数を超えたため、6月29日に受注停止を決断したという。発売当初、RAV4 PHVの月販目標台数は300台だったので、単純計算では年内分で少なくとも1800台は販売したことになる。まだ販売店に実車がほとんど出回っていない時期に“完売”というのは珍しい。大多数の人が、実際に見ることなく購入したのは驚きだ。
RAV4 PHVは、トヨタの人気SUV「RAV4」のプラグインハイブリッド仕様(PHEV)。簡単にいうと、家庭用電源など外部電源からも充電できるようにした、高性能なハイブリッド車だ。RAV4は、19年4月にガソリン車と通常のハイブリッド車(HV)を発売し、年末までに5万3965台を販売している。それに比べると、RAV4 PHVの目標販売台数(年間3600台相当)は10分の1以下。なぜトヨタはこれだけ控えめな目標を立てたのか、そしてその目算をはるかに超えて売れてしまったのはなぜかが気になるところだ。
RAV4 PHVの目標月販台数が控えめだった理由は2つある。第1の理由は、PHEVの要である駆動用バッテリーの供給問題だ。PHEVはHVと同様に、エンジンによる発電やブレーキ回生による充電によって、モーター走行やモーターアシスト走行ができる。さらに、HVよりも大容量のバッテリーを搭載しているので、数十キロメートルの距離をモーターだけで走れる。日常の短距離の移動ならば、エンジンを全く使わずに電気自動車のように乗れるのだ。RAV4 PHVの場合は、RAV4ハイブリッドの約2.8倍となる18.1キロワット時のバッテリーを搭載し、充電した電気だけで95キロメートルを走行できる。そしてPHEVには、通常のニッケル水素充電池よりも軽量かつ高性能のリチウムイオン充電池を使用する。つまり、RAV4 PHVの生産には通常のHVよりも大量の電池、しかもリチウムイオン充電池が必要だが、その供給を急に増やすのが難しいため、年間の生産台数に限りがあったのだ。なお、北米向けのRAV4 PHVも日本の同じ工場から供給されている。
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