韓国の財閥令嬢と北朝鮮の将校の恋の行方を描いた韓流ドラマ「愛の不時着」。2020年2月にネットフリックスでオリジナル作品として配信がスタートすると、半年たった現在も人気ランキング上位を維持するロングヒットになった。コロナ禍で定額制インターネット動画配信サービス(SVOD)の利用者が軒並み増加する中、最も話題をさらったのがこの作品と言っていい。海外発の話題作がヒットした秘密に迫った。

Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中
Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中

 「愛の不時着」の物語は、韓国の財閥令嬢ユン・セリがパラグライダー事故で隣国の北朝鮮に“不時着”することから始まる。そこで遭遇した北朝鮮の将校リ・ジョンヒョクにかくまわれ、困難を乗り越えながら二人の間に愛が育くまれていくラブコメディーだ。ネットフリックスを通じて日本での配信が始まると、じわじわ人気に火が付いた。「Google Trends」で検索キーワードのボリュームを調べてみたところ、「愛の不時着」のグラフが顕著に右肩上がりを示したのは4月中旬。ピークは6月下旬から7月上旬にかけての週と、ブームが長く続いたことが分かる。

 「愛の不時着」の再生回数など、ヒットの規模を直接示す正確な数字は分からないが、その影響の大きさを様々なデータから探ってみた。

 まず、エンターテインメント業界に特化した調査会社GEM Partnersによる、ネットフリックスに加入して3カ月以内の利用者が見たコンテンツのジャンル別平均視聴時間のデータだ。「愛の不時着」の配信がスタートした2月は1時間程度だった韓流・華流ドラマの平均視聴時間が、6月には2時間超と倍増しているのだ。それまで平均視聴時間が長かった海外(欧米)や日本のドラマが4月から6月にかけて軒並み1時間以上減っていることから、普段韓流ドラマを見ない層まで人気が広がったともいえそうだ。

ネットフリックスに加入して3カ月以内の利用者が見たコンテンツのジャンル別平均視聴時間
ネットフリックスに加入して3カ月以内の利用者が見たコンテンツのジャンル別平均視聴時間
「愛の不時着」の配信がスタートした20年2月以降、ネットフリックスに加入して間もない人が韓流・華流ドラマを見る割合が目に見えて上がっていることが分かる。(注)3カ月以内にNetflixに加入した人の、ジャンル別コンテンツ平均視聴時間(時間/週)。ただし、視聴メディアは問わない(出典:GEM Partners「定額制動画配信サービス ブランド・ロイヤリティ調査」)

 コロナ禍の影響もあるだろうが、ネットフリックスの利用者数は20年に入ってからも順調に伸びている。7月時点で休日にネットフリックスをアプリで楽しんでいる利用者数は、1月に比べて約15%も増加(スマホアプリ分析のフラー調べ)。週間利用ユーザー数も20年に入って底上げされている。

 なお、GEM Partnersが6月に実施した動画配信サービス別の人気コンテンツの調査では、ネットフリックスの1位は「愛の不時着」。一方、ライバルのSVODに目を向けると、ランキング上位に韓流ドラマは見当たらない。AmazonプライムビデオやHuluなどでは、1位は軒並み「鬼滅の刃」だった。前述の平均視聴時間はどのサービスで視聴したかを問わないデータだが、韓流ドラマの平均視聴時間急増は「愛の不時着」の人気拡大と比例しているという裏付けになる。ネットフリックス加入者増にも貢献したといえそうだ。

「愛の不時着」はNetflixで一番人気
「愛の不時着」はNetflixで一番人気
「愛の不時着」がいかに支持されているかを示す。なお、「鬼滅の刃」を除く4作品がオリジナル作品(注)Netflixで20年3月以降に見て面白かった作品。Netflix利用者311名の回答から作成(6月13日調査)(出典:GEM Partners「新型コロナウイルスの影響トラッキング調査レポート」)