梅雨明けが関東甲信地方では8月までずれ込んだ今夏。アイス市場にとっては逆風が吹いた2020年5〜7月にかけて、江崎グリコの「アイスの実」と「パピコ」が前年比超えの売り上げを記録した。30年以上続く2つのロングセラーブランドは、なぜ飽きられることなく消費者に愛され続けるのか。同社の絶妙な販売戦略を追った。

アイスの実は毎年、春夏秋冬と季節に合わせてリニューアルを繰り返している。2020年6月のリニューアルでは、3種(ピンクグレープフルーツ、巨峰、和梨)を発売。店頭に並んだ時に目に留まりやすいパッケージとなっている
アイスの実は毎年、春夏秋冬と季節に合わせてリニューアルを繰り返している。2020年6月のリニューアルでは、3種(ピンクグレープフルーツ、巨峰、和梨)を発売。店頭に並んだ時に目に留まりやすいパッケージとなっている

 19年に続き長梅雨となった20年7月は、平年通りだった18年と比べ、アイス全体の売れ行きが不調だった。データ調査会社のTrue Dataによれば、20年7月の買物指数(来店客100万人当たりの売り上げ金額)は、18年7月の買物指数から約76%に落ち込んでいる。しかし、その中でも好調を記録したのが、江崎グリコの看板商品「アイスの実」と「パピコ」だ。20年5~7月のSRIの推計販売規模(金額)によると、アイスの実は前年比117%、パピコも106%にぞれぞれ売り上げを伸張させることに成功している。

 両製品の販売戦略に共通するのは、コロナ禍に合わせて新たな食のシーンを開拓したことだ。そもそも感染症対策で人混みを避けるべく、買い物をできるだけ早く終わらせたいという気持ちが消費者の間で強まっている。売場をじっくり見て商品を選ぶことが減った結果、なじみのロングセラーブランドを手に取る人が増えた。さらにテレワークの普及により、仕事中に人目を気にせず間食しやすくなり、「何かをちょっと食べて気分転換したい」と考える風潮も強まった。同社は、その変化に目を付けた。

知名度は抜群、ただ昔のイメージが崩せず

 まずアイスの実は、そもそも一口サイズでリフレッシュできる点が売りだったことが、ぴったりと需要にはまった。「冷凍庫に常備しておき、仕事の合間に一粒食べるという新しい食べ方につながっている」とマーケティング本部アイスクリームマーケティング部の若生みず穂氏は分析する。

 データ調査会社のTrue Dataの数字も、新たな食のシーン誕生を裏付けている。アイスの実については、20年6月の買物指数が前年に比べて約2.1倍に拡大。6月は、夏の定番となっている「巨峰」「和梨」に加え、柑橘系の爽やかさが特長のピンクグレープフルーツ味の新商品を初めて投入したタイミングだ。目につきやすい色鮮やかなパッケージを採用し、同時期にプロモーションの方針を大きく変えたことが奏功したのである。

アイスの実の買物指数(来店客100万人当たりの売り上げ金額)を19年と20年で比較した。ほぼ1年を通じて前年比超えの売れ行きを見せる中、6月が急伸していることがわかる
アイスの実の買物指数(来店客100万人当たりの売り上げ金額)を19年と20年で比較した。ほぼ1年を通じて前年比超えの売れ行きを見せる中、6月が急伸していることがわかる

 若生氏は、「『(アイスの実を)知ってはいるけど最近食べてない』という人が多いことが課題だった」と振り返る。12年にアイスの中身をとろりとした食感に改良したり、15年には2層構造の外側のコーティングアイスにも果汁を使って最後までフルーツの味を濃くしたり、これまで何度も改良を続けてきた。しかしながら、ロングセラーブランド故に、当初の“固い氷”というイメージを拭うことができなかったという。

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