サントリーのペットボトル入り緑茶「伊右衛門」が2020年4月、起死回生の大型リニューアルを敢行し快進撃を続けている。成功の鍵は、お茶ならではの液色を採用したこと。実は伊右衛門の主力製品は、競合に押される形で売り上げが右肩下がりを続けていた。近年は「崖っぷちだった」と自覚するほどの低迷ぶりからの復活劇の裏側を追った。

新しくなった「伊右衛門」。「お茶らしい」緑色になった液色がよく見えるよう、容器とラベルも大きく変えた(左)。数量限定のラベルレス(首掛けラベル)タイプも2020年4月に発売している(右)
新しくなった「伊右衛門」。「お茶らしい」緑色になった液色がよく見えるよう、容器とラベルも大きく変えた(左)。数量限定のラベルレス(首掛けラベル)タイプも2020年4月に発売している(右)

 サントリー食品インターナショナルが行った伊右衛門ブランド史上最大のリニューアルが奏功している。ペットボトル入り緑茶4大ブランドで長年最下位だったが、リニューアル前後1カ月で売り上げが約2倍に伸長。スーパーでの売り上げは4月のリニューアル後、5月の第1週を除いて4大ブランド中1位をキープしており(サントリー調べ)、コンビニでも首位争いをするほどだという。

伊右衛門525mlのスーパーにおける100万人当たりの買い物指数
伊右衛門525mlのスーパーにおける100万人当たりの買い物指数
リニューアル後に飛躍的に伸びている様子が分かる。注)True Data調べ。スーパーにおける買い物指数(来店者100万人当たりの売り上げ金額)の推移(データ抽出日:20年8月21日)

 リニューアルのポイントは大きく4点。(1)茶色だった液色を本来の緑茶に近い緑色に変更、(2)緑色でもお茶らしい味を新たに開発、(3)容器を覆っていたフルシュリンクラベルを、液色がよく見えるような幅の狭いロールラベルに変更、(4)ロールラベルを巻きやすくするために四角い容器を採用(従来は竹筒形状)。中身、容器、ラベルを全部一新する大掛かりな取り組みとなった。

 特に容器については、10以上ある工場ラインを金型から変えなければならず、同社にとって近年まれに見る大型の設備投資を要した。17年秋から伊右衛門ブランドのマーケティング責任者を務めるブランド開発事業部の多田誠司氏は、「年間3000万ケース以上売れている商品でここまで大型なリニューアルを行うことはほとんどない」と、異例の挑戦だったと打ち明ける。

14年連続で右肩下がり、ついに“臨界点”に

 「本当に崖っぷちだった」——。多田氏は、ブランドの存続に対する当時の危機感をこう説明する。発売以来、本木雅弘さんと宮沢りえさんが夫婦を演じるCM効果により、認知度では抜群の伊右衛門。ただ内情は、主力製品の「サントリー緑茶 伊右衛門」が発売翌年の05年をピークに19年まで右肩下がりを続けていたという。ただ「特茶」や「焙(ほう)じ茶」などのラインアップによるSKU(商品管理の最小単位、品目)の多さが幸いし、金額ベースでは同ブランドの窮地が顕在化することはなかった。

2004年の発売から19年までの「伊右衛門シリーズ」全体の年間出荷ケース数(出所:サントリー食品インターナショナル)
2004年の発売から19年までの「伊右衛門シリーズ」全体の年間出荷ケース数(出所:サントリー食品インターナショナル)

 しかし、19年は売り上げが前年比10%マイナスに落ち込み、20年1~3月には前年同月比で20%も減少。「とうとう“臨界点”に達した」(多田氏)。臨界点とは業界用語で、売り場から販売本数が減らされる「棚落ち」を起こすことを指す。長年営業部からその可能性を指摘されていたが、複数の売り場でついに棚落ちが生じ、19年に4大ブランド中で最下位が確定した。

 伊右衛門は、そもそも「急須で淹(い)れたようなお茶」を京都の老舗茶舗である福寿園と共同開発したことが売り。そこで当初は、ペットボトル入り緑茶で急須で淹(い)れたような味をうたう商品がなかったことから、老舗との共同開発を消費者に全面訴求した。