オフィス用品のアスクルが手掛けるEC、「ロハコ」がさまざまなヒット商品を仕掛けている。コロナ禍でヒットしたのが、焼き立てのパンが届く「ロハコブレッド」。日常使いするパンを通販専用の商品にすることで意外なメリットがあったという。ECで日持ちのしない商品を届けられる仕組みを聞いた。
※日経トレンディ2020年8月号の記事を再構成
ここ数年、オフィス用品の大手アスクルが手掛けるECの「ロハコ」からヒットが連発されている。ECならではの商品設計を生かした独創的なプライベートブランド(PB)商品に秘密があるのだ。
2016年には、ナショナルブランド(NB)の日用品のパッケージデザインを一新するだけでヒットさせた。例えば、花王「リセッシュ除菌EX」は部屋になじむシンプルなデザインに変更。それだけで、当時通常商品よりも100円高い398円という価格設定をしたにもかかわらず、1年間の売り上げが前年比約11倍になるという快挙を見せた。従来のNB商品の場合、ドラッグストアの売り場では他社商品と横並びで陳列されるため商品特色が目立つデザインにする必要があった。しかし、ECでは商品説明は販売ページ上に表示できるため、パッケージで商品価値を訴求する必要がないという“逆転の発想”から生まれた商品だ。「日用品は家では目立つ必要がない」といった需要を見事につかんだ。
他にも、箱ティッシュ5箱分の容量をクラフト紙で1つ包みにしたエコパッケージの王子製紙「nepia krafcoティッシュペーパー」(税込み798円)。暮らしになじむスタイリッシュな箱で届けるアサヒビール「スタイルフリー〈生〉発泡酒 ストレージカートン」(税込み5099円)などは、その発想で作られている。
近年、ロハコが力を入れているのが、オリジナルの食品・飲料のPB商品だ。商品が到着してからの取り出しやすさを工夫したオリジナルダンボール入りの5本入り「LOHACO Water 2L」。発送当日に精米することで鮮度の高い状態で自宅へ届け、ハサミ無しでも開封可能な「ろはこ米」が次々にヒット。消費サイクルの早い米や水は、ユーザーが何度もサイトを訪れたくなる仕掛けとなった。
そして、「通販で“焼きたてのパン”を買う」という新たなトレンドを生み出したのが、19年9月に満を持して発売された「ロハコブレッド」だ。新型コロナウイルス感染症対策の外出自粛が続いた影響も後押しし、20年4、5月の売り上げは3月比約200%と伸びた。しかも「他商品と比べて圧倒的なリピート率がある」(ロハコ)というのが特徴だという。ユーザーの再訪を促す、同サイトの看板商品へと一気に駆け上がった。
開発のきっかけをアスクル マーチャンダイジング本部 LOHACO生活用品統括部で飲料・食品を担当する立花智子氏に聞くと、「通販のパン市場は巨大なブルーオーシャンだった」という答えが返ってきた。総務省統計局「家計調査(家計収支編・総世帯)」によると、1世帯当たりのパンの支出金額は11年以降ずっと米を上回り続けている。そこへ、高級食パンブームも到来。ロハコでも仕入れ商品である、ロングライフパン(特別な酵母を使用した消費期限の長いパン)の売り上げも伸びていたが、ロングライフパンは、菓子パンのような、甘くて味の濃いモノが中心。「お米のように、主食として食卓に並び、毎日食べられるパンを売り出したいと考え、開発に至った」(立花氏)という。
現在ラインアップは5種類。敷島製パンやタカキフードサービスパートナーズと協力して生産しており、水を一切使用せず、牛乳や豆乳のみで仕上げた「耳までおいしいやわらか食パン 北海道ミルク仕込み」(税込み358円)や、国産小麦にこだわったハード系のパン「国産小麦の石窯パン 長時間低温発酵バゲット」(税込み239円)などがある。ユーザーからは「パン屋さんに行かずにこれだけの味を手軽に食べられるのは便利」と軒並み好評だ。
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