フジッコグループが新規事業として取り組む発酵バターのブランド「BUTTER ROUEN(バタールーアン)」が、その滑らかな口当たりや香りの豊かさから評判となり、ヒットの兆しを見せている。現在大丸心斎橋店に1店舗しかなく、価格も決して安くはないが、多い日には1日で500個も売れる。日本人にはなじみの薄かった発酵バターだが、欧州並みにメジャーになる起爆剤となるかもしれない。
「あら、残念やわぁ。もう売り切れてのーなってしもたん?」。20年7月13日お昼すぎ、大丸京都店地下1階の特設コーナーは発酵バター「BUTTER ROUEN(バタールーアン)」目当てにやってくる客でごった返していた。
「平日にもかかわらず、バターサンドは午前中には用意した在庫をほぼすべて売り切ってしまった日もあった」。フジッコの販売子会社味富士でバタールーアン事業を手掛ける江見武志係長は、期間限定の催事とはいえ初めて大阪以外に出店したことに十分な手応えを感じている様子だ。
「カスピ海ヨーグルト」の乳酸菌で日本人好み
フジッコと発酵バターの組み合わせは、ちょっと意外に映るかもしれない。実は同社は、04年から「カスピ海ヨーグルト」を発売して発酵食品事業に参入。カスピ海ヨーグルトで採用する独自の乳酸菌「クレモリス菌FC株」を使って、開発したのがバタールーアンだ。
最大の特長は、日本人の口に合う“あっさり”した味わいを実現した点にある。フランスの著名発酵バターブランドとして「エシレ」「ボルディエ」「ベイユヴェール」などがよく知られているが、「いずれもしっかりとしたコクがありそれがたまらないが、バターだけ食べると濃くて3口もすると日本人にはしんどくなる」(江見係長)。
そこでバタールーアンでは、「パンに塗り」「料理に使い」「ソースやドレッシングを作り」といった日常使いをしても食べ飽きないことを目指した。特別なものではなく食卓でいつも存在感を放つ発酵バターという位置付けだ。
評判を呼ぶ理由は、味わいだけではない。従来のバター製品の常識を覆す売り出し方によって、ファッションやインテリアなど生活の質にこだわるアッパー層の心をぐっとつかんでいるのだ。現在唯一店を構える大丸心斎橋の店舗はおしゃれなたたずまいの店構えとした。紫色のおしゃれな専用手提げ袋を用意するなど、あたかも高級洋菓子店のようなこだわりの演出をしている。
パッケージにもこだわり、通常タイプはスタック可能なプラスチック容器を採用。機能性に加え、それだけでも欲しくなるようなシックなデザインとした。加えて、ゴージャスな脚つきグラスに入ったタイプも用意する。こちらは箱に収められた状態で販売しており、ギフト需要を狙っている。
「4月下旬にオンラインショップを開設したところ、コロナ禍でも母の日需要でかなり売れた。まったく宣伝してなかったにもかかわらず、東京など全国からも注文が舞い込んだ」と江見係長。バターを贈り物として選ぶという今までにない現象を起こすことができたと胸を張る。
フレーバーを多数ラインアップする点も、今までのバターにはない特長といえよう。「ゲランドの塩&トマト」「シシリーグリーンピスタチオ」「ハニーレモン」「ガーリック&ダブルハーブ」「ゴールデンレーズン」など、10種類をラインアップ。「日本人はバターが好きな割に、家庭ではバターを使った料理のアレンジが意外に少ない。短時間においしく日常で非日常を味わえる料理が作れるフレーバーを厳選した」(江見係長)。
例えばゲランドの塩&トマトを使うと、ゆであがったパスタとアサリなどの食材に入れて絡めるだけで「ボンゴレロッソ」が出来上がる。一方ハニーレモンなら、フライパンで溶かしながら生クリームと混ぜれば、「ローストビーフ」にピッタリのソースが出来上がる。
こうしたバターを調味料感覚で使う手軽な料理のアイデアを、味富士はホームページ上で公開している。
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