夏向きマスクの主要12製品をテストする記事の後編。夏マスクのなかでも肌に触れるとひんやりと感じる接触冷感素材を使ったものが続々と出てきている。本当に涼しく使えるのだろうか? 後編は接触冷感マスクを実際に着けて、その使用感をテストした。
※日経トレンディ2020年8月号の記事を再構成

夏のマスクが問題になるのは、前編でも言及したように、マスクのなかで温かい息がこもってしまい、熱中症のリスクが高まることだ。
編集部では、こうした「夏マスク」を実際に入手・装着して試してみた。夏にマスクを着ける際の不満を取材や各種アンケートから考察し、「熱がこもらない」「蒸れにくい」「肌触りがいい」「適度なフィット感」「耳ひもで痛くならない」の5つの観点に注目。一定時間着け続けた感想を記す。なお、サンプルは1枚ずつしか入手できなかったため、筆者の個人的な印象になる。今回は、「熱がこもらない」対策として注目される「接触冷感素材」を使った以下の製品を紹介する。
- ダントツマスクール(小松マテーレ)
- ぴたマスク(コックス)
- ひやマスク(コックス)
- 2層式 洗えるひんやり夏マスク(イデア)
- 超冷感コールドマスク(ギャレリアインターナショナル)
接触冷感素材とは、生地の形状により熱伝導率や熱拡散率を高めた素材。肌から生地にすぐ熱が移動して外に拡散するので、ひんやりと感じる。その強さは接触冷湿感評価値「Q‐max」で数値(単位はW/平方センチメートル)として示される。この数値が高いほど触って「冷たい」と感じやすい。
Q‐maxの数値が0.38と高いのが、石川県の化学素材メーカー、小松マテーレが開発した「ダントツマスクール」だ。同社は、大手スポーツメーカーやアパレルの接触冷感素材をOEM生産してきた実績がある。今回はその技術を活用し、自社マスク生産に踏み切った。体感としても着けた時ひんやりし、生地の温度が上がらない感触が続いた。「現在、第2弾として、より息がしやすい新タイプのマスクも開発中」(小松マテーレ)と言う。
サーモカメラで測ってみた! 口元の温度はやや低くなる?
接触冷感・涼感マスクは本当に涼しいのか。サーモグラフィーカメラを使い、実際マスクによって違いが出るのかを計測してみた。
気温約32度の晴天の中、小松マテーレのダントツマスクールと一般的な不織布マスクとを比較。それぞれを着用し、30分後にマスクを取った直後の顔をサーモカメラで撮影して、主に口元付近の温度変化に着目した。濃紺色が34度と最も温度が低く、青色、緑色、黄色、オレンジ色、赤色の順番で温度が上がり、白は40度を示す設定とした。測定前は口元の温度は36・1度だった。
その結果、口元周りの温度は、ダントツマスクールが35.8度、不織布マスクは37.2度だった。実際の装着感とも一致する結果だった。



では、5製品の着け心地をチェックしていこう。
接触冷感“最強”マスク
ダントツマスクール(小松マテーレ)

他にも、接触冷感機能をうたうマスクが続々と出ている。今回のマスクの中で、Q‐maxを開示していたのは、イデア「2層式 洗えるひんやり夏マスク」が0.271、ギャレリアインターナショナル「超冷感 コールドマスク」とコックス「ぴたマスク」が0.15だ。
マスクは、口の前に僅かな空間があって、熱がこもりにくいという形がいい。この点で好印象だったのは、コックスのぴたマスクだ。本体と耳ひもが一体になった形状で、商品名の通り、口以外の部分が肌にぴたっと張り付く。接触冷感素材のため、接触した肌は少しひんやり感じることもポイントだ。ネット通販や全国のイオン系列の店舗で販売する。
肌に密着して呼吸しやすい
ぴたマスク(コックス)

残りの3製品のテスト結果は以下の通りだった。
柔らかく包み込む肌触り
ひやマスク(コックス)
フィット感抜群の接触冷感タイプ
2層式 洗えるひんやり夏マスク(イデア)

伸縮性の高い接触冷感素材でカバー
超冷感コールドマスク(ギャレリアインターナショナル)

また、マスクを水に浸し3分後の乾き方の差を確認したところ、このカテゴリーのマスクの中では、ダントルマスクール、ひやマスクが優秀だった。
こうして夏向きマスクの条件と照らし合わせていくと、Q-maxの数値が高いダントツマスクールは肌触りも良く、夏用のマスクとしては死角がない。マスク内の熱が抜けやすい形状で接触冷感・涼感の合わせ技も持つぴたマスク、ミズノの「アイスタッチ」マウスカバーも優秀だった。肌触りやフィット感はTioTioプレミアム洗える立体マスクも快適といえる。重視するポイントに合わせて適切なマスクを選び、真夏に備えたい。
(写真/古立 康三)