2019年12月にリリースされた音楽ユニット「YOASOBI」のファーストシングル「夜に駆ける」が、2020年6月になって「Billboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”」で3週連続の総合首位を獲得し話題を呼んでいる。小説を楽曲化するという斬新な制作スタイルや楽曲の良さがじわりと拡散。ここに来て一気に火が付いた。
デビューから約半年、まだ3曲しかリリースしていない新人として異例のヒットを飛ばす2人組ユニットYOASOBI。ボカロP(ボーカロイドプロデューサー)のAyaseがコンポーザーを務め、幾田りら名義でシンガーソングライターとしても活動するikuraがボーカルを担当する。
ボカロPとして活躍し人気のあったAyaseは中高生のファンが多く、その影響で「夜に駆ける」は若年層に利用者が多い動画SNS「TikTok」を基点に人気が広がった。ストリーミング型の音楽配信サービスで10代リスナーをどんどん取り込み、20年1月には音楽配信「Spotify」の日本バイラルチャートで1位を獲得。これをきっかけにテレビ番組の『CDTV』や『めざましテレビ』で特集が組まれファン数が一気に拡大する。
さらに大きな反響を呼んだのが、20年5月にアーティストが一発録りでパフォーマンスするYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」のコンテンツ「THE HOME TAKE」上に動画をアップしたことだった。公開からわずか1カ月足らずで、再生回数1300万回超えを達成した。YOASOBIのプロデュースを担当するソニー・ミュージックエンタテインメントの屋代陽平氏は、「『THE HOME TAKE』を公開して以降、(ファン数の)桁が変わりました」と明かす。
「ボーカロイドのシーンは閉鎖的なところもある。だからこそYOASOBIでは、J-POPや洋楽を聴いている人ともつながりたいと思っていました。YOASOBIからボカロシーンに興味を持ってくれた人もいるみたいで、垣根を取り払えそうな可能性は感じています」(Ayase)。屋代氏も、Twitterのスタッフアカウントの運営を担当していることもあり、この半年で若年層ファンの間に楽曲が浸透しつつあると確かな手応えを感じているという。
小説を楽曲化する異色のユニット
YOASOBIは、出自が一風変わっている。ソニーミュージックは小説投稿サイト「monogatary.com」を運用しており、そこで行われたコンテスト「モノコン2018」に投稿された小説を基にした楽曲を、アニソンシンガーhalcaが歌ったことがきっかけだった。屋代氏は、単発でなく小説を楽曲化するアーティストを作ろうと思い立ち、19年7月に行われた「モノコン2019」でソニーミュージック賞の大賞に輝いた小説を楽曲化するユニットとしてYOASOBIが結成された。
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