革命【1】 超横断的&体験型カリキュラムで実践力を鍛える

 まず、大学として最も重要なカリキュラム。新設工学部は単科学部ながら、極めて高い自由度があるのが特徴だ。

 従来の大学では、大抵の学生は自分が専攻した領域の学問の勉強に終始しがち。例えば、一般的な工学部で機械工学科を専攻した場合、学校の仕組み上は電気工学科などの講義も受けられるが、“越境”してまで受講しない学生がほとんどだという。それに対し、京都先端科学大学の工学部は、単科ではあるが多彩な専門分野を内包し、分野横断的に学べるよう選択肢の幅を持たせている。

 モータ技術者に必須のモータ工学といっても、多様な基礎技術が関係し、応用範囲も多様にある。そのため、工学部には、パワー半導体やコンピューターサイエンス、計測工学、量子力学、材料科学、ロボティクス、数理科学、VR/MRなど、様々な領域を専門とする教員が集結している。

 それだけではない。例えば、自動運転デバイスやロボットの研究をするためには、ハードウエアやソフトウエアの知識が必須となるが、ロボットなどが人間社会に溶け込む世界を想定すると、人との共存をいかに図るかが鍵に。法整備やルールづくりといった社会科学的な分野に加え、人間心理や人間行動学といった人文学的なアプローチも必要になる。そのため、同大学では、学部学科を超えた連携も模索している。

 学び方も大きく変えた。中心になるのが、体験・実践だ。事前に予習して得た知識を使って授業で議論して理解を深める『反転授業』や、グループワークを積極的に導入。中でも、入学してすぐに行う実践型講座「デザイン基礎」は面白い。この講義では、「ロボット」「ワンボードマイコン」「ウェブアプリ」のいずれかを学生が自ら選択し、自分で設計し、つくり上げる。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年度はオンライン形式による講義を実施。写真は、工学部1年の実践型講座「デザイン基礎」を受ける学生の様子
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年度はオンライン形式による講義を実施。写真は、工学部1年の実践型講座「デザイン基礎」を受ける学生の様子

 「まずは自分の手でこんなことができるという成功体験を持たせる。そうすることで、学生のモチベーションを高め、将来、自分が学んでいく専門科目がいかに自分にとって大事かを知ってもらう機会にする。京大で教えていたとき、入学したばかりの学生はみな輝いているのに、夏休み明けにはもう目が死んでいる学生がいた。工学部に入る学生はものづくりが好きな学生が多いのだが、味気のない机上の講義が続くと興味がそがれ、その間に学生たちはアルバイトやサークルなど他のことに目が向いてしまう。だから、まず自分でものづくりができる講義を取り入れることにした」。田畑氏は自らの経験からこう語る。

 これまでロボットやアプリをつくった経験がない学生でも、教員の助けを借りながら自分の“作品”をつくり上げる。その感動が好奇心を生み、「自分一人でつくれるようになりたい」という学習意欲へとつながる。

 後編「全授業英語化、キャップストーン…永守流工学部の核心」(9月28日公開予定)に続く。

日本電産・永守重信氏が目指す人材育成とは 新鋭工学部の全貌(画像)

2020年9月23日発売の新刊書籍『永守重信の人材革命 実践力人材を育てる!』(日経BP)では、工学部を始めとした大学改革の“中身”に加え、永守氏と同氏の薫陶を受けた5人の改革実行者たちがいかにして大学を変革していったのかを詳説。さらに、永守氏の組織改革・人材育成に関する考え方、永守イズムの本質にも迫っている

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(写真/水野 浩志)


「永守重信の人材革命 実践力人材を育てる!」
日経トレンディ編 1870円(税込み)
2020年9月23日発売

日本電産を世界トップの総合モーターメーカーに育てた永守重信氏。そのカリスマ経営者が50年計画で挑むのが大学改革です。「京都先端科学大学」へ既に私財130億円を投じ、理事長として改革を断行。同大学は、大きな変貌を遂げつつあります。本書は、大学改革に追った書籍であると同時に、永守氏の組織改革・人材育成の本質を学べるものです。組織の中で自分がどう動き、人を動かすために何をすべきか。そして、これから世界で戦っていくうえで必要な人材とは何か、ビジネスパーソンに役立つヒントがあります。
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