日本電産・永守イズムで変⾰に挑む京都先端科学大学から、組織改革・人材改革の秘密をひも解く本連載。第4回は、引き続き“永守氏の現場代行”として、経営全体の指揮にあたる元・日本電産取締役専務執行役員の浜田忠章氏の改革を追う。教職員の次は、学生の変革だ。若者をどう育てるか、企業でも活用できるヒントがあった。
・4年間のうちコマ数の22%を割り当て、「実践的な英語力」を生むカリキュラムを導入
・マナーまで徹底! 日本電産流の人材育成スタイルで若者の意識を変える
京都先端科学大学を運営する学校法人永守学園の理事長である、日本電産会長の永守重信氏の“現場代行者”として、大学運営をけん引する浜田忠章氏。中期経営計画や評価制度の導入などにより、大学の組織改革を断行、教職員の意識改革を推し進めた(関連記事「日本電産の人事のプロが副理事長に 永守流M&A成功の流儀」)。取り組みはまさに企業の組織改革に通じる。“勝てる”組織の基礎をつくり出した。
次に進めたのが、第1回の記事「カリスマ経営者永守氏と元東大副学長がタッグ 『大学を壊す!』」でも少し触れたが、学生に実践力を身につけさせるための仕組みづくりだ。偏差値では決して高くない大学において、一見困難なことに思えるが、ここでも浜田氏は明瞭な方針を打ち出す。重視したのが、「実践的な英語力」と「国際的社会人基礎能力」だ。
なぜ英語をこれほど重視するのか。それは、そもそも永守氏の持論ではあるが、浜田氏が日本電産の海外現場である米国子会社に勤務していた頃、社員の語学力の不足を痛感することが多かったからだという。世界40カ国以上で事業を展開する日本電産においては、開発は日本、製造は中国、営業は米国など、取引先外国企業でも機能が多地域に分散している状態で、1つの事業であったとしても双方各国のメンバーの協力が不可欠。国をまたいでのテレビ会議もしょっちゅうだ。その際、品質管理的手法など緻密な話になればなるほど専門的な語学力が求められる。浜田氏は、日本側の技術者たちの語学力不足で十分な意思疎通が取れず、その場で問題解決ができなかった場面にも遭遇したという。
「こうした場面で何度ももどかしさを感じてきたからこそ、英語を使いこなせる学生が欲しいという理事長の言うことがものすごく理解できる。中国の工場で働く中国人技術者は高い専門性に加え、語学力も身につけて会社に入ってきている。日本人は語学力の面で同じ条件下にある中国人にも負けている。それでも日本電産の業績は伸び続けている。もし、この大学で培おうとする実学と語学力を兼ね備えた学生が大勢入れば、会社の利益は今よりもっと伸ばせるはずだ」と、浜田氏は語気を強める。
4年間の総コマ数の22%は英語教育に
そうした思いから、大学では実戦的な英語力を教育の大きな柱にしている。新設された工学部では講義はすべて英語で行われるが、他学部も同様に英語力の養成には力を注ぐ。
まず、浜田氏は実践的なカリキュラムを構築するために米ハーバード大学院で教育学を学んだ英語教育のプロフェッショナルをスカウトし、正社員として迎え入れた。英語プログラムに関しては、世界中で支持されている指導法・プログラムを持ち、国内外の2万社と法人契約を結ぶベルリッツに協力を仰いだ。「新たに採用した英語教育のプロ、大学にいる英語教員とでプロジェクトチームを始動させた。ベルリッツ側と議論を重ね、4年間のプログラムを作成。コマ数でいえば、4年間の総コマ数の22%を英語の履修にあて、第2外国語は必修から外し、英語に集中させるプログラムに仕立てた」(浜田氏)
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