『2025年、人は「買い物」をしなくなる』(クロスメディア・パブリッシング)の著者でD2Cコンサルタントでもある望月智之氏が、毎回ゲストを招いて「デジタル×新しいビジネス×未来の買い物」を語り合う対談企画。今回は、チーズケーキを週に2回、オンライン限定で販売するMr. CHEESECAKE代表取締役の田村浩二氏に話を聞いた。※本企画は、ニッポン放送のラジオ番組「望月智之 イノベーターズ・クロス」(毎週金曜日21:20~21:40)との連動企画です。
Mr. CHEESECAKE代表取締役
いつも取締役副社長
望月智之氏(以下、望月) Mr. CHEESECAKEのチーズケーキは、圧倒的な人気がありますよね。毎週日曜日と月曜日にネットでしか買えないという限定感と、SNSで“人生最高のチーズケーキ”と絶賛する投稿による期待感がここまでの熱狂を生んでいるのかなと思います。これは意図されて仕掛けているのでしょうか?
田村浩二氏(以下、田村) “幻”や“すぐ売り切れる”という部分がよくフォーカスされますが、実はMr. CHEESECAKEとしては意図的に販売数を制限しているわけではないんです。
望月 そうなんですか!? てっきり意図的にSNSで盛り上げるようにしているのかと思っていました。
田村 シェフをしながらチーズケーキを作り始めたので、朝6時からシェフの仕事が始まるまでの3時間で16本作っていました。最初の頃に、その6本くらいを知り合いに配ってみたら、そのうちの一人がインフルエンサーでSNSにアップしてくれ、僕のSNSのフォロワーが一気に300人くらい増えたんです。そしてフォロワーの方たちからの「食べてみたい」という声に応えるために、朝9時から午前0時までシェフの仕事をしてから、夜中の2時に寝て、朝4時に起きて、9時までチーズケーキを作って……という生活をして1日32本と2倍の量を作るようになりました。そうするとさらに口コミが広がって、「食べてみたい」という声もさらに増えてきて、それに応えるうちに今の状況になったというのが真実です。
望月 なるほど。今は田村さんが全て作っているわけではないですよね。
田村 そうです。計量しなくて済むようにあらかじめ原材料の容量を指定したり、人の配置や作業スピードなどをタイマーで計ったりしながら効率化を図っています。それでも需要に追いついていない状況です。
望月 “予約の取れないすし店”や“限定○食のスイーツ”など、なかなか手に入らないものは色々ありますが、特に食の分野では供給を絞ることでブランド価値を上げる手法はよい手であるようにも思えます。今後もどんどん供給量は増やしていくのでしょうか?
田村 そのつもりです。「評判なのに誰も体験したことがない」というのはMr. CHEESECAKEとしてはいい状況だとは思っていません。おいしく食べる、みんなで集まって食べる、ちょっといい紅茶やお酒と一緒に楽しむなど記憶に残るような時間を過ごすためのスイーツとしてMr. CHEESECAKEはありたいと考えています。
望月 なるほど。限定的な人しか手が届かないブランドではなく、ある意味一般的なブランドになろうとしているんですね。そのためには、SNSなどでバズらせることも重要ですが、それよりも実際に体験する人数をどんどん増やさないといけないということですね。
ものづくりは、まず「人の構造」を見ること
望月 ただ、“おいしいもの”って世の中にたくさんありますよね。特にスイーツの領域は「おいしい、かつ美しいもの」であふれているようにも思います。そんな中でMr. CHEESECAKEが「また食べたい」と再購入されているポイントは何でしょうか?
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