「メーカー」という言葉が企業の革新を阻害する

望月氏 今後、日本のメーカーが復権することはあるのでしょうか? 例えばテスラの時価総額がトヨタを抜きましたよね。売り上げはまだまだ勝負にならないとは思いますが、少なくとも市場は、ハードウエアよりもソフトウエア、アナログよりもデジタル、プロダクトよりもサービスに価値があると判断しているということだと思います。

熊本氏 最近では「メーカー」という立ち位置ではない企業もプロダクトを作り出すようになっています。失われた20年の間に日本メーカーの多くは自社で作ることをやめ、ODM・OEMを行う中国などの海外企業に委託していったんです。その結果、ノウハウが空洞化してしまいました。日本のメーカーは発注と案件管理だけで、モノづくりのノウハウや経験がないということも少なくありません。だからこそ、単なるモノづくりではなく、日本クオリティーとしてブランドを作って展開していくということをきちんと考えるべきではないでしょうか。日本では、「メーカー」という言葉自体が、企業のイノベーションを阻害しているように思います。

望月氏 メーカーという言葉への信奉はかなり根強いですよね。「メイド・イン・ジャパン」から「メイド・バイ・ジャパン」へは生産方法という点では実質的には移行しているけれども、ブランド訴求、もっというとIP(知的財産)マネジメントという観点では日本はまだまだ遅れていると思います。

熊本氏 その通りです。日本では「IPはコストをかけて守る・管理する」ことばかりで、IPを活用してもうけるという発想がないんです。以前、特許庁からIPを守ることについて講演依頼をされたとき、「やめたほうがいいです。僕は逆だと思っています」と言って断ったくらいです。

望月氏 世界のIPの状況はどうなっているのでしょうか?

熊本氏 例えば中国で偽物が出回ることで結果的に認知度が上がり、皮肉なことにマーケティングとして最高の状態になることもあります。中国のとある地域の一等地に建っているビルでも実は全てのショップが偽物ばかり、なんてことも珍しくありません。ところがある日、そうしたビルの隣に本物のラグジュアリーブランドのショップができたら、なんとものすごく売れたんです。消費者は、それまであったものが偽物ということは分かっているので、本物を持つという優越感があるんです。

望月氏 偽物は本物があってこそなので本物を超えることができないし、そもそも偽物が出るくらい良いものだという宣伝になるからでしょうね。amadanaはそれこそIPをうまく活用している企業のように思うのですが、いかがでしょうか?

熊本氏 そうですね。それは事業の根幹だと思います。今ちょうど、ヴェルディのリブランディングを行っています。ヴェルディはサッカークラブのイメージがあると思いますが、ヴェルディというIPをサッカー以外のスポーツにも展開してブランドビジネスを行う予定です。社会人軟式野球やバスケットボール、ビーチバレー、eスポーツなどにも進出しています。「ヴェルディ=サッカークラブ」ではなく、各種のスポーツがヴェルディというブランドをうまく活用しながら有機的に拡張させているというイメージです。

望月氏 なるほど、ブランドというカルチャーやフィロソフィー、イメージさえきちんと定義してあげれば、一つの製品やサービス、カテゴリーに捉われることなく横展開できるということですね。各企業は自社のIPを単なる法律的な権利ではなく、ブランドとして今一度捉え直すことが必要だと思いますね。

(構成/ライター・竹井慎平、照應堂)