NTTドコモが手掛けるキャッシュレス決済「d払い」。同社が2020年4月に発表した19年度決算によると、19年度は18年度に比べ、ユーザー数で2倍、取扱額で3.2倍に伸びている。躍進の原動力は7500万人超の会員を抱えるdポイント。マツモトキヨシなどの加盟店は店舗への送客力を評価する。メルカリとの連携も決めた同社の戦略を探った。

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NTTドコモのコード決済サービス「d払い」(写真/Shutterstock)
NTTドコモのコード決済サービス「d払い」(写真/Shutterstock)

 NTTドコモは大手携帯キャリアの中でもいち早くアカウントのキャリアフリー化に踏み切り、ユーザーがNTTドコモの回線を使っているかどうかにかかわらず、同社のサービスを利用できる環境を整えてきた。

 コード決済サービスの「d払い」もそのうちの1つだ。2018年4月のサービス開始当初から、NTTドコモの携帯電話料金との合算払いに加え、クレジットカード払いにも対応。19年9月には、銀行口座やセブン銀行のATM、コンビニ店頭でチャージできる「ウォレット」機能を追加した。

d払いのアプリ。コード決済では携帯電話料金との合算払いやクレジットカード引き落とし、チャージからの支払いが選べる
d払いのアプリ。コード決済では携帯電話料金との合算払いやクレジットカード引き落とし、チャージからの支払いが選べる

 取扱額、ユーザー数が共に大きく伸びたのは、国のキャッシュレス・消費者還元事業が始まった19年10月からだ。NTTドコモウォレットビジネス推進室長の田原務氏によると「19年10月の取扱額は同年9月に比べて30%ほど増えた」。19年度を通してみると、ユーザー数は18年度の2倍に、取扱額は3.2倍に伸びている(19年度決算説明会資料より)。

dポイントとの合わせ技で利用者・加盟店を拡大

 同社がd払いの強みと位置付けるのが、7500万人の会員を持つポイント還元システム「dポイント」との連動だ。キャッシュレス・消費者還元事業に合わせ、条件付きで通常ポイントに10%のポイントを上乗せして還元するキャンペーンなどを展開。田原氏は、d払いの利用拡大についても「dポイントをためてもらえるような施策を重視している」と語る。

 こうした戦略の背景にあるのは、リアル店舗も巻き込んだdポイント活用の好循環だろう。携帯電話料金の支払いなどでためたdポイントは、NTTドコモのサービスだけでなくdポイント加盟店でも利用できる。その利便性に気づいたユーザーがコード決済もd払いを選び、dポイントをためるようになるというサイクルだ。

 田原氏によると、「dポイントの会員数を伸ばせたのは、当初からローソンやマクドナルド、マツモトキヨシなどのリアル店舗を中心に加盟店を増やしてきたことが大きい」。そのことは、同社が19年度に発行した約2000億ポイントのうち、約1200億ポイントが加盟店で使われていることからもうかがえる。そして今はそのdポイントが、それら加盟店でのd払い利用促進につながっているわけだ。

 さらにdポイントは、d払いの加盟店開拓においても強みを発揮する。dポイントとd払いはサービス開始時期が異なることもあり、どちらか一方だけを導入している店舗もあるが、併用することで店舗への送客力が高くなるからだ。「加盟店からもその点を評価する声は大きい」(田原氏)。

 マツモトキヨシもそんな加盟店の1社だ。同社ではdポイントとd払いを導入しており、店舗でdポイントカード(dカードを含む)を提示すると100円につき1ポイント、d払いで決済すると200円につき1ポイントたまる。たまったポイントは1ポイント1円として利用できる。

 マツモトキヨシの担当者は、d払いとdポイントの効果として「最も大きいのは顧客の購買単価向上。dポイント会員の購買単価は非会員の1.2倍、d払いも使うと2倍まで高まる」という。

マツモトキヨシはd払いやdポイントのユーザーを対象としたキャンペーンを行い、効果を上げている
マツモトキヨシはd払いやdポイントのユーザーを対象としたキャンペーンを行い、効果を上げている

 また、同社は20年3月にd払いとdポイントのユーザーを対象としたキャンペーンを実施した。キャンペーンサイトからエントリーの上、対象店舗でdポイントカードを提示して買い物をした先着100万人に、通常の20倍のポイントを付与するというもの。うち1日は、d払いで決済すると支払額の50%をポイントで還元するキャンペーンも併催した。その結果、dポイント会員による売り上げは前月比で約5%伸長。d払いのキャンペーンを実施した日は通常の10倍に当たる取引実績になったという。

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