キャッシュレス市場は第2幕へ 鍵握る携帯キャリアの顧客基盤(画像)

キャッシュレス業界はこの数年、各社が大規模なキャッシュバックやポイント還元策を連発し、苛烈な利用者獲得競争を続けてきた。だが、国によるキャッシュレス・消費者還元事業の終了、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、局面は今、競争から相互連携に移行している。中心にいるのは携帯キャリア。通信事業を核に構築した顧客基盤が業界再編の鍵を握る。各社の戦略を展望する。

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再編が続くキャッシュレス市場。携帯キャリアのサービスが合従連衡の中心にある
再編が続くキャッシュレス市場。携帯キャリアのサービスが合従連衡の中心にある

 周知の通り、2019年はキャッシュレス化の波が市場に打ち寄せた年だった。10月には国がキャッシュレス・消費者還元事業を開始。これを追い風に、キャッシュレス事業者が利用促進キャンペーンにしのぎを削った。

 けん引したのはソフトバンクとヤフーが共同出資するPayPay(東京・千代田)だ。18年10月のサービス開始当初から「100億円あげちゃうキャンペーン」など、大規模なキャッシュバックキャンペーンを連発し、知名度と利用者数を一気に伸ばす戦略に出た(関連記事「スマホ決済最強はPayPayとEdy MMD研究所の調査より」)。

PayPayはサービス開始当初から「100億円あげちゃうキャンペーン」など大胆な施策を相次いで展開した
PayPayはサービス開始当初から「100億円あげちゃうキャンペーン」など大胆な施策を相次いで展開した

 これに他社も追随する。LINE Pay(東京・品川)は19年4月に購入額の最大20%を還元するキャッシュバックキャンペーンを実施。メルカリの全額出資子会社であるメルペイ(東京・港)や楽天ペイの楽天ペイメント(東京・港)、d払いのNTTドコモなども、自社のポイントプログラムを活用したポイント還元キャンペーンを展開した。主に決済手数料がビジネスを支えるキャッシュレス事業では、利用者数と加盟店数、決済回数を増やすことが安定運用の第1ステップ。各事業者は、そのために身銭を切ることもいとわない体力勝負を続けた。

還元競争から協業へ

 潮目が変わったのは19年11月、ヤフーの持ち株会社であるZホールディングス(ZHD)とLINEの経営統合発表だ。それぞれが持つキャッシュレス事業の登録者数は、PayPayが2500万人(20年3月時点)、LINE Payが3700万人。重複があることを考慮してもその規模は大きい。両社とも「具体的なことはまだ何も決まっていない」というが、PayPayとLINE Payが連携すれば、国内最大級の顧客基盤が整うことになる。

キャッシュレス業界にも衝撃を与えたZホールディングスとLINEの経営統合(写真/酒井 康治)
キャッシュレス業界にも衝撃を与えたZホールディングスとLINEの経営統合(写真/酒井 康治)

 このことがキャッシュレス業界の再編を促した。まず、メルペイが20年1月に「Origami Pay」を運営するOrigami(東京・港)を買収。同社はLINE Pay、NTTドコモ、KDDIの3社とキャッシュレスに関するアライアンス「Mobile Payment Alliance」を組んでいたが、ZHDとLINEの経営統合を受けて19年12月に解散したばかりだった。

 一方のOrigamiはキャッシュレス決済事業に特化したベンチャーで、16年5月にサービスを開始した最古参だった。その同社が後発のメルペイに買収されたことは、核となる顧客基盤や決済事業を後押しする中核サービスがない事業者の生き残りの難しさを明らかにした。

 メルペイは続いてNTTドコモとも手を組んだ。20年5月以降、「メルカリID」と「dアカウント」を連携させ、メルカリの利用でdポイントをためたり使ったりできるようにする。メルペイとd払いの電子マネー残高やポイント残高も連携させ、相互に利用できるようにする予定だ。

 メルペイとしては、7500万人いるdポイントクラブの会員を自社サービスに誘導できるのがメリット。NTTドコモは「20代、30代と比較的若いメルカリのユーザーにd払いをはじめとした当社のサービスを使ってもらうきっかけにしたい」(NTTドコモウォレットビジネス推進室長の田原務氏)という。

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