
2019年10月から始まった政府主導の「キャッシュレス・消費者還元事業」が2020年6月末で終了する。購入額の5%をユーザーに還元する施策はキャッシュレス化の推進に貢献できたのか。コロナ禍の影響はあったのか。関係者の証言と各種の調査データから明らかにし、今後の課題を追った。
「2019年10月から始まった政府主導の『キャッシュレス・消費者還元事業』によって、多くの国民の関心がキャッシュレス決済に向いた。PayPayの決済回数がこの1年間で17倍になったように、同事業は、キャッシュレス化を推進する追い風となったと言える」
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こう語るのは、コード決済事業者大手PayPay(東京・千代田)の藤井博文マーケティング本部長だ。PayPayは2018年10月のサービス開始以来、順調に事業を拡大し、20年4月22日には登録ユーザー数2800万人を達成した。とりわけ、還元事業が始まった19年10月のユーザー数急増が、2800万人到達に大きく貢献したという。
この急増ぶりは、PayPayの四半期ごとの決済回数の推移を見ると、さらによく分かる(上図)。事業を開始した19年10月に始まるQ3(2020年3月期決算の第3・四半期)の決済回数を、直前のQ2(20年第2・四半期)の決済回数と比べると、2倍以上に伸びていることが一目瞭然である。「還元事業のおかげで当初、期待していた以上の風が吹いた」と藤井氏は振り返る。
約4割の消費者がキャッシュレス決済を利用
キャッシュレス・消費者還元事業とは、消費税率引き上げ後の消費喚起とキャッシュレス化の推進を目的に、19年10月1日から20年6月末まで、主に経済産業省が旗を振って実施した、中小・小規模事業者に対する支援制度のこと。還元事業に参加した店舗で、ユーザーが商品やサービスを購入してキャッシュレス決済すると、店舗が中小・小規模事業者の場合は決済額の5%、大規模チェーンに参加するフランチャイズ店などの場合は同2%が、ユーザーにポイント還元される。
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