キャッシュレス・消費者還元事業を最大限に活用した成功事例が福岡にある。九州北部のホームセンター「グッデイ」はキャッシュレス専用カウンターを各店舗に用意するなど、懇切丁寧にQRコード決済の使い方やメリットを説明。キャッシュレス比率は1年で2倍に拡大し、売り上げにも大きく貢献した。

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 キャッシュレスに対応しても新規の顧客は増えず、手数料分がマイナスになるだけ。こんな考えから導入に二の足を踏んでいた店舗も多いのではないだろうか。だが、キャッシュレス・消費者還元事業を着実に売り上げに結びつけた、模範的な小売りがある。福岡を本拠とするホームセンターの「グッデイ」だ。

グッデイは1978年に福岡・大野城市に1号店をオープンしたホームセンター。現在は福岡、佐賀、大分、熊本、山口に65店舗を展開
グッデイは1978年に福岡・大野城市に1号店をオープンしたホームセンター。現在は福岡、佐賀、大分、熊本、山口に65店舗を展開

 運営するグッデイ(福岡市)は福岡県を始め、佐賀県や山口県などに計65店舗を展開。郊外型店舗も多く、先進的な顧客ばかりを抱えているチェーンではない。にもかかわらず、売り上げに占めるキャッシュレス比率は2020年5月時点で約36%を占める。1年前の19年4月が約18%だったことを考えると、わずか1年強で比率を2倍に伸ばした計算になる。

 具体的なキャッシュレス比率の伸びは、以下のグラフを参照してほしい。19年4月~9月はほぼ横ばい。これは極めて一般的な小売りの動きだろう。ところがキャッシュレス・消費者還元事業が始まった直後の10月にいきなり6ポイントも上昇。その後も毎月1%程度ずつ着実に積み上げており、ほぼ右肩上がりの伸びを見せている。

 新型コロナウイルスのまん延後もキャッシュレス比率は落ちず、「むしろ数パーセント増えた」(グッデイの持ち株会社である嘉穂無線ホールディングス管理本部財務経理部部長の松石寛文氏)。現金を敬遠する一方で、接触が少ないキャッシュレス決済が安心材料として新型コロナ対策に合致したのでは、と松石氏は見る。

1年前には20%にも満たなかったキャッシュレス比率が、キャッシュレス・消費者還元事業開始の10月以降急増。その後も着実に比率を伸ばし、比率は1年強でほぼ2倍となった
1年前には20%にも満たなかったキャッシュレス比率が、キャッシュレス・消費者還元事業開始の10月以降急増。その後も着実に比率を伸ばし、比率は1年強でほぼ2倍となった

「キャッシュレスって何ですか」に寄り添う

 注目すべきは、キャッシュレス比率の増加とともに、売り上げも伸ばしているという点だ。「キャッシュレスによって5~6%ぐらい増えたのではと分析をしています」(松石氏)。どのように売り上げに結びつけたのか。始まりは、キャッシュレス・消費者還元事業がスタートする少し前の、19年9月にさかのぼる。

 グッデイはPayPay、d払いなど現在10種類以上の決済方式に対応しているが、当時はまだ今ほどマルチではなく、「これは使えるのか」という客からの問い合わせが既に相次いでいたという。10月の還元事業スタート後はさらなる混乱が必至だった。

 一方で、グッデイはキャッシュレス・消費者還元事業では中小企業のカテゴリー。5%還元の対象店に該当していた。「これを生かさない手はない」と、グッデイでは還元事業前に従業員教育で資料を共有。「5%還元ということは、お客様におすすめすべき案件であることは間違いなかったので」と、嘉穂無線ホールディングスマーケティング部 広報・宣伝課長の島村菜見子氏は当時を振り返る。

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