「人口減で鉄道会社とて安泰ではない」という危機感から生まれたJR東日本スタートアッププログラム。JRをどんな企業に変えていくか、お手本となったのはドイツだった。ベンチャーと二人三脚で変革に挑むこれからの駅はどうなっていくのか。JR東日本スタートアップの柴田裕社長が、「駅の3つの未来」を語る。
【第2回】無人駅がグランピングの聖地に大変身 JRが挑む600駅の再生
【第3回】新型コロナで変化 JR東の「ロボット」と「無人店舗」の現在地
【第4回】利用者減る駅はどう生き残る JR東日本が見据える「3つの未来」←今回はココ
「西口から東口が見える」。こんなツイートが2020年4月、写真とともに公開され驚きの声が上がった。映っていたのは世界一の乗降客数を誇るJR新宿駅。普段ならごった返すはずの通路を歩く人はまばらで、“見えないはずの”反対側の出口が見える。新型コロナウイルス対策による外出自粛が生んだ、新たな光景だった。
昔から景気変動に強いディフェンシブな銘柄と言われていた鉄道だが、新型コロナはそんな優等生にも容赦なく牙を剥く。4月18~19日の土日、JR東日本の新幹線と在来線特急の利用者数は前年同期比で94%減。この数字の衝撃は計り知れない。
もちろんこんな世界を予測できた人は誰もいない。だがJRはすでに布石を打っていた。それがJR東日本スタートアップ(東京・新宿)。「人口減で鉄道利用者数は確実に減る。このままだとまずい。新しいチャレンジを今のうちに始めなければならない、というのが原点だった」と語るのは、同社社長の柴田裕氏だ。JRのような固い企業とスタートアップという対極の言葉がくっついた会社は、こんな危機意識から生まれた。
ドイツの鉄道会社から着想
19年で第3回を迎えたJR東日本スタートアッププログラム。このお手本となったのはドイツだ。現在、無人AI決済店舗を運営するTOUCH TO GO(東京・新宿)の社長を務める阿久津智紀氏は、JR東日本スタートアップができる以前のJR東日本所属時代、視察に訪れたドイツで「これだ」と思ったという。JRと提携しているドイツ鉄道。同社が設立した組織「DBマインドボックス」が運営するアクセラレータープログラム(大手企業や自治体がベンチャーに出資や支援を行い、事業共創を目指すプログラム)だ。
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