ベンチャー側が最初に出した提案が、そのまま採用されるケースはまれだ。例えば本特集の第1回で紹介したコークッキング(東京・港)が最初に出した提案は、「駅でTABETEを広げる」という意図があった。だが議論を重ねるうちに、やるべきは夜勤の駅員の食生活向上なのではないか、という道筋が見えてきた(「JR東京駅の夜勤者を救え 食品ロス1トンを削減したSDGsベンチャー」)。全く文化の異なる両社がぶつかり合うことで、これまでになかった画期的なアイデアが次々と生まれてくる。

 ベンチャー側は、JR東日本スタートアップをどう見ているのか。各社が口をそろえるのは、大企業の子会社らしからぬ身の軽さだ。さらにJR東日本の中での存在感の大きさに驚く声も多かった。あるベンチャーは「JR東日本スタートアップがかんでいるなら嫌とは言えないなぁ、とJR東日本内での話がすごくスムーズに進んだ」と振り返る。

未来に広がる「3つのステーション」

 これからのキーワードとなるのは、やはり「駅」だ。無人駅を宝の山に変える、駅そばにロボットを導入する、駅をコミュニティーの起点にする、とアイデアの源泉には常に駅がある。柴田氏にこれからの駅はどうなっていくのかを聞いてみると、「3つの未来」があるという。

 1つ目は「スマートステーション」。テクノロジーやAIを活用した駅。ロボットが人手不足を補い、人ができないこともサービスとして提供する。「高輪ゲートウェイがどんどん広がっていくイメージ」(柴田氏)

 2つ目は「暮らしのステーション」。駅が単なる乗降場所から、街や暮らしのハブになる。「無人駅がグランピングの聖地に大変身 JRが挑む600駅の再生」で紹介した、南相馬市の小高駅のイメージに近い。柴田氏は「暮らしの拠点として、他業種と協業する取り組みなども検討している。さまざまなコラボが進んでいくと思います」と明かす。

 そして最後は、今も昔も変わらぬ「旅のステーション」だ。「旅はこれからも重要なコンテンツであり続ける。観光、旅の拠点として魅力を発信していきたい」という。

 駅から始まる、JR東日本スタートアップの挑戦はこれからも続く。2020年もコロナ禍に負けず、第4回のスタートアッププログラムの募集を4月13日からスタート。鉄道を走らせ、駅や商業施設だけやっていればいい時代は確実に終わろうとしている。果たして次は、ここからどんな夢のあるプロジェクトが生まれるのだろうか。

第4回のJR東日本スタートアッププログラム。テーマは「地方創生」「観光・インバウンド」「スマートライフ」の3つを設定
第4回のJR東日本スタートアッププログラム。テーマは「地方創生」「観光・インバウンド」「スマートライフ」の3つを設定

(写真提供/JR東日本スタートアップ)