人気を拡大させたアニメ 異例のプロモ展開

 しかし、なぜ鬼滅の刃はここまでのブームになったのか。人気に火が付いたのは、19年4月からのアニメ化がきっかけだ。放送前に350万部だった累計発行部数は、わずか1年で何と約11倍もの伸びを見せた。アニメが契機となりヒットした作品は少なくないが、短期間でのこの伸び率は尋常ではない。“鬼滅旋風”が巻き起こったのには、異例尽くしのプロモーションや、映像美、全26話の計算された展開があった。

 アニプレックスは鬼滅の連載が始まって間もなく、映像化を集英社に打診したという。「漫画そのものが非常に面白い。ジャンプ作品らしく友情・努力・勝利という不変のテーマがありつつ、単なる勧善懲悪ではない。敵となる鬼側にも悲しい過去がある。その人間ドラマに魅力を感じた」(プロデューサーの高橋祐馬氏)。そして企画書提出から3年弱、ついに映像化が実現。最高の鬼滅を最高の環境で届けるため、「自分の知る限り前例がない」という戦略をまず仕掛けた。

 それは、アニメ放送前に1〜5話をまとめて映画館で上映するというものだ。「主人公が運命に巻き込まれ、人との出会いがあり、修行をして技を身に付け、敵を倒すという物語を一貫する面白さが、最初の5話にまず凝縮されている。鬼滅だからこそできたアイデアだった」(高橋氏)。見に来た人の多くが原作ファンという高いハードルを乗り越え、高評価を獲得。限られた期間・場所での上映だったが、SNS上にあふれた評判が逆に見に行けなかった人の期待をあおり、熱量が十分高まった状態で初回のテレビ放送を迎えることができた。

 全国で一気に認知度を高められたのは、放送枠や配信チャンネルの豊富さも大きく寄与している。通常の深夜アニメなら4〜5局のところ、全国21局という異例の規模で放送を開始したのだ。放送終了後も抜かりなく映像配信サービスでの公開を継続。その数は何と20サイト以上に及ぶ。「配信サービスへの加入は多くても1つや2つ。このアニメがやっているから新しいサービスに入ろうとはなかなかならない。リーチを広げるために配信チャンネルを同時に多く確保した」(高橋氏)。データのやり取りなど作業は増えるが、アニプレックスには配信の専属部署があり、比較的スムーズに行えたという。

 映像配信サービスでの連続放映は、第1話の再生回数が一番多くなるのがセオリー。しかし鬼滅の刃は話数を重ねるほど再生回数がどんどん増えていった。「鬼滅は話が進むにつれて面白さが加速度的に増していく。数話で1任務という構成のためストーリーを追いやすく、映像配信サービスと相性がいい。だからこそこのような逆転現象が起きた」(高橋氏)。

 ファンの熱量が冷めないよう、作品と接する機会を継続することも心掛けたという。キャストやスタッフが出演する「鬼滅ラヂヲ」や、AbemaTVと連動した「鬼滅テレビ」を定期的に放送。鬼滅テレビで新たなキャスティングを発表することもあった。19年10月にはキャストによる生アフレコなどが見られるリアルイベント「鬼滅の宴」も開催。チケットは即完売し、映画館でのライブビューイングにもファンが押し寄せた。

大胆なアニメプロモーションを次々に仕掛けた
1~5話を映画館でまとめて先行上映
19年4月のアニメ放送に先駆け、1~5話を『鬼滅の刃 兄妹の絆』として3月29日から全国11劇場、2週間限定で公開。最速公開となった3月19日のワールドプレミアには、主人公とその妹の声優を務めた花江夏樹氏と鬼頭明里氏らが登壇した
ファンが詰めかけたリアルイベント
アニメ放送終了後の19年10月にリアルイベントを開催。生アフレコや、LiSAによる主題歌「紅蓮華」の歌唱を楽しみに、大勢が集まった

宣伝だけではない 熱量を高める投稿
キャラクターの誕生日にイラストを描き下ろし祝うなど、Twitterの投稿自体をコンテンツ化している
フォロワー数140万人超え
フォロワー数140万人超え

©吾峠呼世晴/集英社 ©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

※後編「アニメ「鬼滅の刃」、放送後「神回」とトレンド入りし続けた秘密」も同日公開