
※日経トレンディ 2020年6月号の記事を再構成
2020年、新型コロナウィルスの感染が拡大する中での上半期ヒット商品と、ウィズコロナ時代の下半期ブレイク予測を総まとめした本特集の第1回。逆風下でも見事な成績を上げた製品やサービスは数多くある。「新・巣ごもり需要」の他、新たに見えた4つのヒットの法則とは。
これほど、誰も予想せぬ事態が起きたことがあっただろうか。20年2月下旬から日本でもまん延し始めた新型コロナウイルスが、五輪フィーバーを吹き飛ばし、「戦後最大の危機」を世界中にもたらしている。国際通貨基金(IMF)の見通しによれば、20年の世界GDPの予測値はマイナス3.0%。しかもまだ終息は見えていない。
しかし、このような時期だからこそ売れている商品もある。感染予防を期待して、マスクや消毒液などの衛生用品、健康に良さそうな食品、そして空間除菌剤や空気清浄機が売れているのは言うに及ばず。外出自粛やテレワーク推奨に伴って、自宅でできるだけ快適に過ごしたいという「新・巣ごもり需要」も生まれている。
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【第13回】 任天堂リングフィットが品薄に 人生ゲームも特需【ゲーム玩具】
【第14回】 au Payが上半期に躍進 3%還元のLINE Payクレカも注目【マネー】
【第15回】 「ソロキャンプ」ブームが加速 用具やサービスも1人用が充実
日経クロストレンドの調査によれば、新型コロナによって外食、旅行、イベントなどの「コト消費」は激減。代わりに「自宅での食事」や「動画配信サービスの利用」など、宅内での消費が増えている。この2~4月に好調だった商品では、家庭料理を簡単かつ豪華にできる調理家電や、食材を混 ぜるだけで食卓に出せるメニュー用調味料がまず挙がる。運動不足を解消できるゲーム機は品不足が慢性化するほどの売れ行きで、コミュニケーション不足を補えるテレビ会議システムは、業務だけでなく「飲み会」にも使われるほど一気に定着した。未曽有の危機を少しでも豊かに過ごしたいという思いが見えてくる。
もし、このような生活が長引くのであれば、有名料理店の味を自宅で楽しめるキットや、自宅を映画館のようにできるプロジェクター、「癒やし」を提供できる家族型ロボットなど、自宅でぜいたくができる商品やサービスに手を伸ばす人も増えるだろう。
「強いブランド」を再強化
20年上半期のヒット商品を見れば、困難な時代を乗り切るヒントが見えるかもしれない。この中ではまず、既存の定番商品や強いブランドをさらに強化する手法での成功事例が目立った。
「湖池屋プライドポテト」は初登場の3年前への原点回帰を思わせるリニューアルを敢行。サッポロビールは「黒ラベル」と「ヱビス」の“いいとこどり”を狙った「第3のビール」を開発した。ライオン「ソフランプレミアム消臭」のように、好調だった製品のパッケージなどを変更して、さらに販売を伸ばしたケースもある。
その一方で、果敢に新市場を切り開いた事例も数多くあった。若年層向けのイメージがあった「ファンタ」は大人向けを展開。ラベルプリンター「テプラ」はPCからスマホ対応に切り替えて成功しつつある。今後も新型コロナの影響で、人々の生活様式やマインドが変化し、新たな「空白市場」が生まれる可能性は高い。そこをいかにつかまえるかもポイントになる。
数年前から年々高まっている健康志向は、20年上半期も根強かった。新商品では、たんぱく質を気軽においしく取れる食品や飲料、運動効果を高めるフィットネス用品から新商品がいくつも生まれている。東京五輪フィーバーによる上積みは延期により期待できなくなったが、代わりに新型コロナによる外出自粛によって、栄養の偏りや運動不足を気に掛ける人は増えるだろう。
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