映画館や劇場などのリアルの場で、バーチャルアーティストのライブ配信を手がけるバルス(東京・千代田)。コロナ禍を受け、リアルアーティストのライブや演劇をオンライン配信できる「SPWN portal」を公開した。イベントはどう変化していくのか、林範和CEO(最高経営責任者)に聞いた。
新型コロナウイルスの感染拡大で、リアルイベントは大きな影響を受けています。
林範和氏(以下、林氏) 2018年にスタートした「SPWN」は、もともとリアルのイベント会場に参加するチケットと、会場には行けないけれど見たいという人に対応するオンライン配信チケットの2種類を販売する仕組みを持っています。コロナ禍で、リアルな場所に多くの人を集めることが難しい中では、オンラインでも集客できる点がメリットになっています。
また、同一プラットフォーム上で、物販の予約まで対応しているのもポイントです。リアルイベントでは、オリジナル商品を求め、開場前に人が長蛇の列をつくることは少なくありませんでした。事前に予約販売をすることで、購入者は並ぶ必要がなくなります。今、コロナ禍において、もし2メートルの間隔を空けて並ぶとしたら、どれだけ長い列になるか分かりません。そうした事態を避けられる手段としても、物販の事前予約機能は非常に関心が寄せられており、興行側の関係者から相談の問い合わせを多数受けています。
さらに、20年4月には、オンラインイベント促進のため、「SPWN portal」の提供を開始しました。従来、自社主催イベント用のシステムとして運用していたサービスですが、外部のアーティストなどがオンライン配信やECの物販が行えるプラットフォームとして開放しました。提供後は、音楽ライブをはじめ、演劇、朗読劇、ファンクラブミーティング、ビジネスセミナーなど、多数のイベントが開催され、5月末までに100件以上を実施、チケット代や物販売り上げなどを含めた流通総額は1億円を突破しています。6月末には、いとうせいこうさんが発起した無観客配信のオンラインフェス「MUSIC DON’T LOCKDOWN グランドフェス -vol.2-」を開催。チケットとグッズ販売の収益を寄付するなど、チャリティーイベントも行われてきました。
YouTubeなどの動画が基本的に無料で鑑賞できる中、こうした有料のオンラインイベントは受け入れられているのでしょうか。
林氏 チケットの単価は、当初500~1000円程度だったのが、今は3000~4000円くらいが主流です。少し前に実施されたサザンオールスターズのライブも3600円でした。リアルのイベントに比べるとまだ安価ですが、着実に単価が上がってきていると実感しています。
チケット単価の上昇に加え、特徴的なのがスマホで見る人が顕著に増えてきていることです。これはオンラインチケットを購入してライブを見る習慣が、徐々に一般化されて幅広い層を取り込んできていることを意味します。SPWN portalではそうした動きに合わせ、スマホ上の画面を2分割し、ライブを見ながらグッズを購入できるなど、機能拡張を進めています。
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