新型コロナウイルスの影響が長期化する現在、”真のニューノーマル”を見通すには、先進技術の動向を見据えることが不可欠。革新技術を持つ企業を資金面・人材面で支援し、ヘルスケアやデジタルトランスフォーメーション(DX)領域の投資先も多いベンチャーキャピタル、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)の郷治友孝社長に聞いた。
UTECは、大学発の有力なベンチャーを発掘し、支援しています。コロナ禍の今、注目している業界やベンチャーは?
郷治友孝氏(以下、郷治氏) 現在、新型コロナウイルスについて、治療薬やワクチンの開発が全世界で進められています。このwithコロナの段階では、医療・創薬系のスタートアップの動向に関心が集まっています。UTECが投資する中で世界的に期待が高まっているのが、ペプチドリーム。東証1部上場を果たし、時価総額は約6000億円とメルカリに遜色のない規模で、現在グローバル製薬企業11社、国内製薬会社6社と協業をしています。多様なアミノ酸を組み合わせて「特殊ペプチド」を人工合成し、適切な治療薬がない疾患の新薬候補を効率的にスクリーニングする革新的な技術が強み。新型コロナ関連でも、米Merck(メルク)と治療薬を開発すると発表し、注目が高まっています。
また、ワクチン関連で興味深い取り組みをしている投資先の一つが、シンガポール発のimmunoSCAPE(イミュノスケープ)です。薬やワクチンを投与した後の免疫反応を詳細に解析する技術を持ち、新型コロナのワクチンの有効性などの検証に役立つと期待されています。新型コロナのRNAワクチン開発を進める米Elixirgen Therapeutics(エリクサジェン・セラピューティクス)は、米国政府が支援するなど、有望視されているベンチャーです。
有効なワクチンの開発に加え、ワクチンを迅速に量産する技術の開発も急務です。一般的に、ワクチンは、大腸菌や鶏卵の細胞分裂を利用して生産されてきましたが、それでは非常に時間がかかります。オリシロジェノミクス(東京・文京)は、細胞分裂に頼らず、人工合成技術によって大量かつスピーディーにワクチンを量産する技術を持つベンチャー。ワクチンを迅速に開発し、量産化できる技術が高度化すれば、今後ウイルスが変異したり、新しい感染症が発生したりしたとしても、影響を最小限に抑えることが可能になります。
センサーやレーダーの“非カメラ”監視が有望
医療系以外にwithコロナの観点で特徴的な技術を持つベンチャーは。
郷治氏 感染防止の観点から、室内環境や人間の動向を非接触でモニタリングする技術に注目が集まっています。
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