『アフターデジタル』シリーズの著者であるビービット藤井保文氏の連載。経営共創基盤(以下、IGPI)の共同経営者である塩野誠氏との対談の最終回となる第3回。DX(デジタルトランスフォーメーション)を大義とした企業変革にはスピードが不可欠だが、日本的な合意で進めていくと厳しいと説く。グローバルな視点を持つ塩野氏が、今「価値の再定義」が重要だと考える理由とは。

ビービット 東アジア営業責任者の藤井保文氏(左)と、経営共創基盤(IGPI) 共同経営者/マネージングディレクターの塩野誠氏(右)。対談はリモートで行われた
ビービット 東アジア営業責任者の藤井保文氏(左)と、経営共創基盤(IGPI) 共同経営者/マネージングディレクターの塩野誠氏(右)。対談はリモートで行われた

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ビービット 藤井保文氏(以下、藤井氏) ここからは塩野さんが別の機会にお話しされていた「価値の再定義」というトピックについてお伺いしたいと思います。

 アフターデジタル時代には企業やサービスは世界観を提示することを求められる、というのが私の考えですが、その世界観をつくる上で、特に日本の大企業や老舗企業にとっては、価値の再定義ということが非常に重要だと、身に染みて感じています。

 塩野さんは、どのような理由で価値の再定義が大切だとお考えになったのでしょうか。

IGPI 塩野誠氏(以下、塩野氏) 価値の再定義というのは、言い換えれば世界観・倫理観の再定義とも言えるかと思います。それが大切だと思っている理由はいくつかあるのですが、まず1つ目に、今この時代には世界観・倫理観が必要だと思っている、ということがあります。

 というのも、新しいテクノロジーが登場したときというのは社会が変化したときでもあって、そこで出てきた考え方は、米シリコンバレーもそうですが「破壊せよ・独占せよ」でした。ただ、その考えでスタートした企業が一定以上に大きくなってくると、そこに社会的責任というものが伴うようになって、ある種の倫理観が必要になる。

 かつてGoogleに存在していた「Don't Be Evil(邪悪になるな)」という非公式ポリシーは非常に先見性があったと思っていて、つまりパワーには責任が伴うことを知っていたということですね。こういった倫理観が今まさに必要とされている時代ではないかと思うわけです。

今回の対談ゲスト:塩野 誠(しおの まこと)氏
経営共創基盤(IGPI)共同経営者
国内外で企業の戦略立案・実行のコンサルティング、M&Aアドバイザリー業務、ベンチャー/PE投資を行う。近年は北欧、バルト、ロシアでの企業投資に従事。各国のDXの事例を調査し、日本企業のコーポレートトランスフォーメーションを手がける。近著に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』がある。JBIC IG Partners 代表取締役CIO 、JB Nordic Ventures(Nordic Ninja)取締役、IGPIテクノロジー取締役、ニューズピックス社外取締役、ビービット社外取締役、慶應義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。ヘルシンキ在住

藤井氏 なるほど。

塩野氏 2つ目には、北欧型の考え方というところで少しお話しした「概念をセットして、それをテクノロジーでどう実装するかと考える」というやり方を実践するときには、やはり「世界観」が必要だということですね。

“DX先進国”の北欧から日本が学べることは多い(写真/Shutterstock)
“DX先進国”の北欧から日本が学べることは多い(写真/Shutterstock)

 一例ですが、フィンランドに「アップライト」という新しい会社があるんですが、非常に野心的でですね。「あらゆる世の中じゅうの企業の純インパクトを算出する」って言っているんです。

藤井氏 ……え?

塩野氏 そう、やっぱり聞いた瞬間「それ何?」ってなる話じゃないですか(笑)。

藤井氏 はい、なりました(笑)。

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