『アフターデジタル』『アフターデジタル2』の著者であるビービット藤井保文氏の連載。サントリーコミュニケーションズ執行役員本部長 室元隆志氏との対談の後編をお届けする。社内の意識を変えるこつ、DX(デジタルトランスフォーメーション)に当たって個人に求められるケイパビリティーとは。
<前編はこちら>
藤井保⽂⽒(以下、藤井⽒) 前回は、自販機部門でのDX推進に当たって「経営層を落とす」ということを意識され、ビービットのチャイナトリップに経営陣をお連れいただいたところまで、お話を伺いました。
参加された方の最初の様子から、これまでの成功体験に根差した考え方を変えることの大変さを実感されたとのことでしたが、研修自体は成功だったともおっしゃっていましたね。
室元隆志⽒(以下、室元⽒) 最初はどうなることかと思ったこのチャイナトリップの中で、参加者が自分たちに課題があるということに気づき、「何かしらヒントを見つけなければ」というモードになった。その大きく変わった瞬間を目の当たりにしたときは、これだ! と思いましたね。
実はその後社内の若手向けに、私なりにチャイナトリップをサントリー向けにアレンジして話をしたことがあったんですが、そのときも、最初は斜めに見ていた参加者が終わる頃には深刻な顔になっていた、ということがありました。
なので、課題を感じていてもその解決策はデジタルではないだろうと思っていた人たちが、デジタルとUX(ユーザーエクスペリエンス)で進んでいる企業はこういう意図・思いで進んでいるんだということを深く理解できると、それが自分たちにはできていない、「ヤバいかもしれない」という危機感につながる。そういうことかなと。
サントリーコミュニケーションズ/執行役員 デジタルマーケティング本部長
藤井氏 何か、伝え方のこつのようなものはありますか?
室元氏 当たり前ですが、課題を認識している人に話さないとダメだということですね。経営層の中でも、自分の事業をどうしようかと考えている経営者には刺さりやすいのですが、いい調子でいっている事業というのは課題感が薄いんです。
それから、どうしてもHOWの話、つまり「体験づくりをしましょう」「顧客理解をしましょう」という話を先にしてしまいがちかと思いますが、それではあまりうまくいかないんですね。聞いた方からするとリアルかデジタルか、というノウハウの競い合いに見えてしまうので、それなら今まで通りの方が慣れているし、と考えてしまうんでしょう。
でもその奥にある、最終的に自分たちは何を実現する企業なんだっけ、というWHATの部分から入って、例えば我々はメーカーなので「お客様によい商品を提供すること」をずっとやってきたはずですよね、と。そういう自分たちの強み、真骨頂だと思っていることを、「それがダメになるかもしれない」と気づいたときに、ようやくHOWについて聞く耳を持てる状態になるんです。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー