著書『アフターデジタル』『アフターデジタル2』で日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)のあり方について提言を続けるビービット藤井保文氏が、先進的なDXを実践している企業の経営幹部や、同じ未来を見据える識者を直撃する対談連載。第5回は、サントリーグループでDX推進の中心的役割を担うサントリーコミュニケーションズ執行役員本部長 室元隆志氏に話を聞いた。
ビービット 藤井保文氏(以下、藤井氏) 室元さんとは、光栄なことにこれまでも複数のコンサルティングプロジェクトや様々な議論など、ご一緒する機会を多くいただいてきましたが、今日は改めてこれまでのお取り組み、特に大企業でDXを推進する大変さについて、お話を伺いたいと思っています。
サントリーコミュニケーションズ 室元隆志氏(以下、室元氏) 分かりました、よろしくお願いします。
藤井氏 では最初に、改めて今の室元さんのお立場についてお話しいただけますか。
室元氏 はい。私はサントリーコミュニケーションズのデジタルマーケティング本部というところで、本部長・執行役員をやっています。この会社は2017年に設立された、サントリーの各事業会社・営業会社のコミュニケーション系のサポートをする横串の機能会社です。
デジタルマーケティング本部では、基本的に全サントリーグループのプロモーション活動やコミュニケーション活動の中で「デジタルをどう使っていくのか」ということを考えています。R&D(研究開発)もやりますし、実務のサポートをすることもあります。
さらに今は、20年4月に組織されたグループ全体のDXチームのサブリーダー的なこともやっています。この組織は、全サントリーグループがこれからいかにDXを進めていくのかを設計し、また、その設計に基づいて最初の一歩をやってみせる、というプロジェクトチームでして、目下、何をやっていくのかを絶賛議論中というところです。
サントリーコミュニケーションズ/執行役員 デジタルマーケティング本部長
藤井氏 DX推進のサブリーダーとのことですが、全社の方針としてDXが打ち出されるに至った経緯というか、おそらくその決定にも大きく室元さんが関わられているのではないかと思うのですが、そのあたりのお話も少し伺ってもいいでしょうか。
室元氏 DXにつながり始めた、ということで言えば、恐らく契機はECだと思うんです。私自身は00年からデジタルの仕事に関わり始めたんですが、ECはAmazonでお酒の直販がスタートした14年から始まりました。もともとの、つまりリアルでのシェアは当時3位だったんですが、ECでは6カ月たった時点で1位をとり、そこからダントツの首位をキープしたんですね。
メーカーが思うプロモーションをやるのではなく、お客様がどう買うのか、何を思って選んでいるのかということ、今で言うとUX(ユーザーエクスペリエンス)という言葉に近いかと思いますが、それを探ることで一気にシェアを拡大できた手応えから、UXが成果に結びつくとを確信したんです。
これが自分の中では大きな転機でしたし、その後のデジタルを通したコミュニケーションや、DXというところに進化していった原点になっていると思います。
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