『アフターデジタル』の著者であるビービット藤井保文氏の連載。『文系AI人材になる』著者のZOZOテクノロジーズ 野口竜司氏との対談の後編をお届けする。アフターデジタル時代に企業とユーザーはどのように信頼関係を築いていくべきか。UX(ユーザーエクスペリエンス)やAI(人工知能)のベースをつくるには、企業の「社人格」が必要と説く。
藤井保文(以下、藤井氏) データが財産、という勘違いに加えて、日本のデータ活用はほとんどアップセル等の「売りの最適化、プロモーションの最適化」の話ばかりだな、ということも課題意識として感じています。
野口竜司氏(以下、野口氏) そうですね、マーケティング活用については、短期でパフォーマンスを上げるためには高い反応率が必要なので、そういった領域から始まることは理解ができます。
ただ、それをやり過ぎてユーザーと企業の関係がすり減ってしまう、ということも起きているのではないでしょうか。
藤井氏 おっしゃるとおりだと思います。結局、GDPR(EU一般データ保護規則)の話やデータ転売事件の話も、とにかく企業が目先の売り上げに直結させる形にしか使っていないということが問題だと思っています。
野口氏 順番の問題だとは思うのです。先に信頼価値を上げて、それが売り上げにつながる、という順番にしないとおかしなことになってしまいますよね。
売り上げを上げるためにいろいろやり過ぎて信頼価値が下がる、結果、次の年度の売り上げが下がる、ということになると本末転倒なので、単年ではなく3カ年、5カ年におけるLTV(顧客生涯価値)を考えた上で、本当に重要なことって何だろう、というところに戻らないといけないわけで。
藤井氏 本質的ですね。
野口氏 人間関係でもそうだと思うのですが、信頼関係ができることが出発点、その信頼関係をつくれるまでの時間を待てるか、ということを日本企業は考えていかないといけないのでしょうね。AIやデータ活用という意味でも。
藤井氏 ビービットの考えでは、データをUXやプロダクトに還元するということが、ユーザーから信頼を得る唯一の方法だと捉えています。まず最初にデータから得られる知見をプロダクトおよびユーザーに還元し、そのことによって信頼関係が生まれ、ユーザーの利用頻度やスティッキネス(サービスに対する粘着度、離反のしにくさ)が上がって、さらにデータがたまるようになる。
そこまでくると、好きな企業が販売しているものであれば、その企業のサービスと直接関係がないようなものでも、その商品が欲しくなる、ということが起きるので、新しいビジネスが生まれることにもつながる。信頼関係のある企業からのメッセージが最適化されていくなら、「好きな企業が便利なことをしてくれる」という良い見え方になりますよね。
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