前回は、データで人を動かすデジタルマーケティングのアプローチとして、「データサイエンス」についてお話ししました。今回は、デジタルマーケティングをグローバルで進める際について理解を深めていきましょう。
スマートフォンで検索し、オンラインショッピングで買い物し、SNSで人とつながって気になるブランドや有名人をフォローする――。このように現代の生活者は、情報接触行動の多くがオンラインサービスに広く依存しています。
特に中国では、独自の新技術や機能を取り入れたオンラインサービスが登場。数億人もの利用者のデータを活用して、日々目覚ましく進化しています。
グローバル全体で生活のデジタル化が進む
例えば10億人を超えるユーザーを抱えるある巨大プラットフォーマー企業は、もともとはメッセンジャー機能で事業を興しましたが、今では「タクシーの配車」「オンラインショッピング」「店舗での支払い」「金融」「医療」など、生活の様々なシーンで利用されるサービスを提供しています。中国では、日本以上に生活のデジタル化が進んでいると言えます。
最近では、巨大プラットフォームの中で展開される「ミニプログラム」が広く活用されています。プラットフォームが提供する共通アプリの中で自社ブランドの機能やサービスを配置できる機能で、各企業は独自アプリを展開する必要がありません。
おかげで、生活者は共通アプリさえスマホにダウンロードしておけば、日常生活の幅広いニーズを満たせるようになりました。結果として、企業やブランドごとのアプリを個別にダウンロードする必要性が劇的に減っています。
例えばある化粧品ブランドは、プラットフォーム上のミニプログラムを通じてイベントに参加してクーポンを取得したり、AI(人工知能)キャラクターや同じ会員ファンたちとチャットで楽しめるようにしたり、そのままEC(電子商取引)サイトに遷移して決済・購入したりできるようにしています。
中国以外のアジアの国や地域でも、生活のデジタル化は進行しています。例えばある国のショッピングモールの地下駐車場では、自動車のナンバープレートが自動識別され、駐車した場所はショートメッセージでスマホに通知され、駐車料金の支払いも自動で行われます。さらに、自動車の修理予約や試乗サービスまでスマホで完結できてしまうほどです。
ヘルスケア分野でもこの国では、医師とチャットで健康相談ができ、病院の受付の列に並ぶことなくスマホで事前の診察予約ができます。さらに、診療でポイントがたまるプログラムまであります。生活のほとんどのシーンにデジタル技術が浸透しており、日本よりも便利だと感じる例は枚挙にいとまがありません。
ただ国や地域ごとに、活用できるテクノロジーやサービスは異なり、生活のデジタル化の進行度に差があります。加えて、個人情報保護を目的とした法律や現地生活者の行動特性、価値観、市場環境なども、それぞれの国や地域ごとに違いや特性があります。
私たちがデジタルマーケティングを展開する際には、こうした違いを理解したうえで現地の生活者に受け入れられるような持続可能な仕組みおよび体制を構築することが重要です。
例えば中国では、国の規制で利用できない米国発のオンラインサービスがあります。このため、中国を地場とする大手オンラインサービスを活用して、中国人の生活や市場環境、そして価値観に合うデジタルマーケティングをクリエーティブしなければなりません。そのうえで、持続可能な仕組みや体制を構築し、運用するのです。
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