マーケティングの新しい常識を学ぶ本連載も、残りわずかとなりました。今回は「データサイエンス」をキーワードとして取り上げます。マーケティングの現場で実践できるデータ分析のアプローチについて、詳しくお話ししたいと思います。

データサイエンスとは、一筋縄ではいかないビッグデータの中から生活者の本音を見抜くことができるようになるためのいわば“道具箱”だ(画像提供/博報堂)
データサイエンスとは、一筋縄ではいかないビッグデータの中から生活者の本音を見抜くことができるようになるためのいわば“道具箱”だ(画像提供/博報堂)
今回学ぶマーケティング用語
「データサイエンス」

 マーケティングを実施する目的とは、「人を動かす」ことです。商品やサービスの価値を生活者に伝えたり、価値を体験できる仕組みを作ったりして、人を動かす戦略を立てて実施するのです。マーケティングにおいてデータ分析は、人が動く可能性を探る手段であり、多くのマーケターに戦略を構想したりインサイトを発掘したりする際のよりどころをもたらします。

 「分」「析」という文字は、それぞれ“分ける”ということを意味する日本語です。そして分けることで、マーケターは「どうしたら人は動くのか」について“分かる”のもポイントです。データ分析する目的は、人が商品・サービスを買って利用する現象について答えを導き出すことだと言い換えられます。

 ここで、分析に当たって「5W2H」に切り分けて問いを投げかけることが重要です。具体的には、「When(いつ):タイミング」「Who(誰が):ターゲット」「What(何を):商品・サービスの価値」「How(どのように)およびWhere(どこで):購入方法・経路(チャネル)」「How much(いくらで):価格」「Why(なぜ):理由」――です。

 これらの問いはいずれも、連載で紹介してきた「STP」や「SWOT分析」「3C分析」といったマーケティングのフレームワークに対応しています。マーケティングのフレームワークを組み立てるために、データから仮説という素材を紡ぎ出す“道具箱”。それがマーケティングにおけるデータ分析なのです。詳しく見ていきましょう。

生のデータから生活者の本音を見抜く道具箱

 データ分析の世界には、マーケティングに利用できるデータの量と質が大きく変化するに連れて、いろいろな学問領域の手法が入ってきています。調査や実験を行い、統計学を駆使して消費者心理やマーケティングの法則を導き出す研究が続けられています。既に実務にも取り入れられており、生活者調査を行って「STP」「SWOT分析」「3C分析」「ブランド・パーパス・ストーリー」を考察するのはごく一般的になりました。こうした分析で使われるデータは、5W2Hの問いに対して明確に答えるものです。

 一方、現在活用が進んでいるものに「デジタル・トランザクション・データ」と呼ばれるデータがあります。デジタルデバイスを通じた人の行動をリアルタイムに記録したもので、その量は膨大であることから「ビッグデータ」と呼ばれます。その中には、マーケターが知りたい行動だけでなく、無関係な行動も含まれます。どの行動が問いに関するものなのかは一見分かりませんから、ビッグデータから欲しい情報を見つけ出すのは困難です。こうしたデータの状態は、「スパース(疎)」と呼ばれます。

 そこで役立つ道具が、データサイエンスです。一筋縄ではいかないビッグデータの中から生活者の本音を見抜くことができるようになります。統計解析に堪えられるように設計されていない生のデータを扱うため、情報科学分野の知識や技術を応用します。「深層学習」「強化学習」といった言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、こうした機械学習に関する数理モデルをデジタル広告の配信や効果検証で利用する動きが活発になっています。

 また、整序されたデータからマーケティングの意思決定に示唆を与える何らかのファインディングス(発見)を導き出すため、「計量経済学」「行動経済学」「数理社会学」「認知心理学」などの知見や方法も利用されるようになってきています。

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