前回はマーケティング基盤の活用方法を取り上げました。今回は、ここまで紹介してきた生活者のデータを取り扱うに当たって、マーケターはどのようなことに留意すればよいのかについて安全・安心面から解説します。またその上で、生活者に役立つ形でデータを活用するための様々な手法についても紹介します。
生活者一人ひとりに関する情報としては、「各種サービスの登録情報」「行動履歴情報」「デバイス情報」などがあります。こうしたデータを企業が扱うと、マーケティングを通じて「個人に合った情報・広告が提供される」「望まない情報・広告が減少する」といった利便性を生活者に対して提供できるようになります。
一方で生活者からすれば、「知らないうちにデータが収集される」「個人の詳細な特徴に関する情報が集積される」といった懸念が生じるのは当然です。データを運用する際には、法令で定められた「個人情報」を法令にのっとって正しく扱うだけでなく、生活者に不信感や懸念を抱かせないようにデータを取り扱わなければなりません。
では、「自分のデータがどのように取り扱われているのか」について透明性を担保する重要性が高まっているなか、具体的にはどうすればよいのでしょうか。
より厳格化される個人情報関連の法規制
まず、日本の法令で定められている「個人情報」の定義について、現時点(2020年6月時点)で整理してみましょう。そもそも個人情報とは特定の個人を識別できる情報です。単独で個人情報と認められるものとしては「氏名」「指紋」「旅券番号」などがあります。住所や電話番号などは単独では個人を識別できるものではありませんが、氏名などと組み合わせると識別可能になります。ですから、これらもやはり個人情報に該当します。
また、Webブラウザーの識別子である「Cookie(クッキー)」(i)や、スマートフォンやタブレットといったデバイスの識別子である「広告ID」(ii)などは、単独では個人情報ではないとされています。あくまでもWebブラウザーやデバイスが識別できるだけだというのが理由です。しかしながら、企業が管理している顧客情報など他の情報とひもづけると個人の識別ができる場合があります。こうしたケースでは現時点における法令上、Cookieや広告IDも個人情報として扱うべきだと整理されるのが通例です。
一方欧米では、日本と異なりCookieや広告IDは規制の対象です。特に欧州では、16年に一般データ保護規則(GDPR)が制定され(iii)、生活者のデータの取り扱いをより厳格にするよう企業に要請されるようになりました。企業がGDPRを順守しないと巨額の課徴金を課される例もあり、日本企業にとってもデータの取り扱いはより一層重要度を増しています。
こうした昨今の個人情報保護・プライバシー保護の潮流を受けて、日本でももっとデータの取り扱いを厳格にしようとする動きが出てきました。20年3月、個人情報保護法の改正案が提出され、2社間でデータ連携する際の新しい規律が導入されました。Cookieや広告IDなど非個人情報であっても、データを受け取る側となる企業が自社の個人データとひもづける場合、事前に生活者の同意を取得することが必要になりました。
生活者から具体的にどう同意を取るかについてはまだ詳細が確定していませんが、日本においても生活者のデータに関して透明性をもっと担保しなければならなくなるのは間違いないでしょう。
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