新人マーケターに向けて、博報堂のマーケティングプラナーが実践的なマーケティングを紹介する本講座。前回で第1部が終了しました。そこで今回は、これまでのおさらいと「これからのマーケターの役割」について説明していきます。

今回は連載の第1部をおさらいする(写真/Shutterstock)
今回は連載の第1部をおさらいする(写真/Shutterstock)
今回学ぶマーケティング用語
「マネジリアルマーケティング」

 「マネジリアルマーケティング」。若い読者の方にとっては、聞き慣れない言葉かもしれません。これは、米国から1950年代の日本にマーケティングという学問が初めて紹介されたときに提唱された概念です。60年に日本で初めて神戸大学で「マーケティング論」の講座が開設された際、当時の講義では「Market+Ing=市場を作る」「マーケティングとは顧客の創造」(i)という説明とともに、「マネジリアル=経営トップの市場戦略立案の手法」(ii)とマーケティングは位置付けられていました。すなわちマーケティングは、経営者の広い視野の中で行われるべきだという定義です。

 その後、日本企業にマーケティング部門が数多く設置されるようになると、『エスキモーに氷を売る』(iii)に代表されるような、「マーケティングとは販売やプロモーション」という矮小(わいしょう)化された概念へとマーケティングの捉え方が変わります。技術や生産などの「モノづくり」を重視してきた日本企業に対して広告会社などがマーケティング活動を担った際、しきりに言い立てすぎたことも影響していると思います。

 しかしここ10年、あらゆるサービスをインターネットを介して提供する「XaaS(X as a Service、ザースと読む)」などのモノのサービス化やオープンイノベーションによるモノ作りの外部化、IoT(インターネット・オブ・シングズ)やビッグデータによる顧客情報の容易化、D2C(消費者直販型取引)などのオムニチャネル化などが進みました。既存の競争資源(生産技術や品質管理など)を強みとして発揮しづらくなり、事業戦略を組み直す機運が高まっています。昨今の新型コロナ禍で、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が連日メディアで躍っているのも、ここに要因があると思われます。

 私たち博報堂のマーケティングプラナーが読者の皆さんにお伝えしたい「マーケターの本分」とは、狭義の販売やプロモーションだけでなく、本来あるべき経営者の視座を持つ「ビジネス全体の設計者=ビジネスデザイナー」になることです。そのために、マーケティングという古くて新しくて奥深い活動を、一連の業務プロセスに沿ってご紹介してきました。

第1部を総ざらい

 ここからは、博報堂の第一線で活躍するマーケターがマーケティングの基礎を改めて総ざらいし、ビジネスデザイナーになるために必要な新しい役割を説明したいと思います。これまでの14回を簡単にレビューしますと、マーケティング戦略を策定し(第1~6回)、実践し(第7~12回)、最適管理して(第13~14回)、資源配分するというのが大きな流れでした。以下、詳しく見ていきましょう。

 まずは、マーケティング戦略領域でのマーケターの役割を振り返りましょう。

マーケティング戦略を策定する(第1~6回)
マーケティング戦略を策定する(第1~6回)
「マーケティング」「SWOT分析」「STP」「3C分析」「ブランドパーパス」「ブランドパーパス・ストーリー」を学ぶ

 ここではSWOT分析による「未来の見立て」を起点に、社会変化の兆しをいち早く捉えることが求められます。競合にはない自社資産と掛け合わせれば、必ずや未来のビジネスチャンス、取り組むべき課題が見えてくるはずです。

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