前回は、サービス開発における顧客体験価値の設計についてお話ししました。今回は、「価格設定(プライシング)」について考えていきます。商品やサービスの価格は、購買欲求に大きく左右するとともに、企業収益にも直結します。企業にとって非常に重要なテーマです。
毎年のように値上げを繰り返しても事業を継続的に成長させられる企業もあれば、値上げに失敗して業績が悪化してしまう企業もあります。どんなに良い商品・サービスを開発しても、価格設定のさじ加減一つで生活者の反応は大きく変わります。
では価格とは、どのように決めるべきなのでしょうか。代表的な価格設定方法としては、(1)原価志向型(原価に一定の利幅を確保する「マークアップ方式」など)、(2)需要志向型(顧客がどの程度の価格を支払うかの基準を調査して決める「知覚価値価格設定法」など)、(3)競合志向型(競合企業の価格に基づいて設定する「現行レート価格設定法」など)の3つがあります。
これから価格設定は「ダイナミック」「パーソナル」に
このうち原価志向型か競合志向型で決定するのがこれまで一般的でしたが、これからは第4の手法が主流になるとみられています。それが、「適切な価値提案型」です。
全ての生活者が、低価格を志向しているわけではありません。こだわっている商品なら高くても買いたいと考える人は少なくありません。例えば旅行商品なら、ハイシーズンの飛行機や人気が高くて予約が難しいホテルなら、定価の倍の金額を払ってでも購入してくれるでしょう。一方で所有から利用へと生活者の価値観が変わってきたことから、買わずに必要なときだけレンタルで利用できればよいと考える人も増えています。まとまった金額は支払いたくないが、月額料金の形でなら契約してもよいというわけです。
このように生活者のニーズは多岐にわたるようになり、マーケターは商材やサービスの特性に応じて独自のプライシングモデルを設計しなければならなくなりました。最適な価値を提供するための価格を考える必要が出てきたわけです。
適切な価値提案型を実現する価格設定方法として注目を集めているのが、「ダイナミックプライシング」です。需要と供給の状況に応じて、適時商品やサービスの価格を変動させる戦略です。ホテルや飛行機などで先行して採用が始まり、最近は美容室や駐車場、テーマパーク、ゴルフ場といったサービス業にも広がりつつあります。食品ロスが経営課題になっている小売業界の場合、RFID(無線自動識別)タグを商品に張り付けてリアルタイムに在庫状況や消費期限を取得できるようにし、消費期限によって価格変動させている例もあります。
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