第7回では、オープンなものづくりについてお話ししました。今回はプロダクトを超えた概念である「サービス開発」を取り上げます。サービス開発というテーマが注目されるのは、LTV(ライフ・タイム・バリュー、顧客生涯価値)という概念がマーケティングで重要になってきたためです。今回は3つの視点からサービス開発についてお話しします。
例えば自動車メーカーは、車を販売した後の各種サポートをディーラー経由で提供しています。これは、車というプロダクトを販売したらそれでおしまいではなく、車を販売した後も気持ちよく使ってもらうために、様々なサポートをサービスとして提供し、それも含めてビジネスをしているということです。
サービスを提供することによって、購入時の満足度だけでなく利用している間の満足度も高め、次も自社の自動車を買いたくなる「リピート意向」を生活者から引き出します。自動車メーカーの狙いこそが、一生の間にそのメーカーとどれくらい取引をするかを示すLTVの拡大であり、それをいかに大きくするかについて知恵を絞っています。
一方で自動車というプロダクトの保守整備を提供するためには、ディーラーで人をたくさん雇用する必要がありました。最近は、スマートフォンやソーシャルメディア、IoT(インターネット・オブ・シングス)などのデジタルテクノロジーが進化し、少ない人件費で購入後に手厚いサービスを提供しやすくなりました。
つまりあらゆる業界において、質の高いプロダクトを販売するところで途切れていた企業と生活者の関係を、デジタルの力を借りたサービスによって購入後もつなぎやすくなってきているのです。
サービス開発がマーケティングに変化をもたらす
例えばスポーツ用品メーカーについて考えてみましょう。日々のランニングを記録するアプリケーションは、デジタルサービスでLTVを長期化させる好例でしょう。もちろんメーカーとしては、プロのアスリートが求めるような高機能でデザインの良いランニングシューズやウエアをアピールし続けることは大切です。しかしカジュアルにスポーツを楽しみたい一般の生活者にとっては、世界記録を出すことではなく、日常の中で楽しくランニングし続けることがシューズを買う目的です。
それを踏まえれば、自分が「いつ」「どこで」「どれくらい」走ったかを記録して簡単にスマホ上でチェックできると便利なことが分かります。目標をクリアすると記念したバッジがもらえたり、友達とつながってお互いのランニングの記録を公開し合って刺激を受けたりできれば、明日もランニングを続けようというモチベーションの維持がしやすくなります。
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