前回は「ブランディングは、パーパス主導になっていく」ことについて学びました。ブランドの存在意義を再設定する動きが最近広がりつつありますが、一方でそれに合わせて、顧客との関係についても見つめ直すことが必要となります。今回は、ブランドと顧客の新しい関係性を模索していきたいと思います。
これまで顧客の購買行動は、認知から始まる「ブランド・ファネル(漏斗)」の図で捉えるのが一般的でした。ここでのゴールは顧客をいかに多く獲得するか、です。獲得する顧客数を最大化するには、いかに認知を広め、可能な限り認知者に理解や興味を深めてもらうなど、ブランドとの関係性を深い段階へと移動させることが重要でした。
その結果、認知拡大のためのコミュニケーション施策により多くの投資を行う必要があります。つまり、買ってもらうまでが主戦場でした。
ブランドと顧客は「体験を共同編集」する関係へ
しかし前回触れたように、現代は商品やサービスが均質化し、機能や性能で大きな差異化を図るのが困難になりつつあります。また、これから購買の中心を担うミレニアル世代は、何を所有するかは大事ではなく、所有することによって自分がどう感じるかに重きを置く傾向が強いとされます。ブランドや企業そのものに共感してもらい、ひいてはファンになってもらうことが求められる時代が来ているのです。
では、顧客はブランドの何に共感するのでしょうか。ここからは、顧客側の視点に立って考えてみましょう。
優れた機能や性能はどうでしょうか。おそらく感嘆することはあっても、共感はしないでしょう。共感を得るために必要なのは、提供する商品やサービスの背景にある確かな世界観やストーリーの存在です。世界観やストーリーに顧客は親しみを感じ、自分の感性と重ね合わせ、時には周囲に語ってブランドに対する共感を広げてくれます。ゆえに、顧客となります。
つまり、これからのブランドとの関係において、顧客はブランドイメージや商品の機能などを一方的に受け取るだけの人から、背景にある世界観やストーリー、体験を共同編集する人へと変化していきます。コミュニケーションにおいても、企業やブランド側はあらゆるタッチポイントを通じて、絶えず情報を届けることが不可欠になります。
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