緊急事態宣言が全国で解除されました。ここ数カ月は新型コロナウイルスの感染拡大によって家で過ごす時間が増えたことから、ストリーミング型の映像配信サービスの視聴時間が飛躍的に伸びました。世界の視聴習慣が、ストリーミングに向けてさらに加速したことは間違いないでしょう。今回は変わりつつあるハリウッドの「ウインドー戦略」について見ていきます。

ハリウッドビジネスを支える大きな柱「ウインドー戦略」とは(写真/Shutterstock)
ハリウッドビジネスを支える大きな柱「ウインドー戦略」とは(写真/Shutterstock)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、中国や米国では映画館が閉鎖され、それに伴いDVDや個別課金型の購入・レンタルサービスよりも、ストリーミングを通じて通常より早いタイミングでリリースされる作品がありました。また、劇場公開を省略していきなりストリーミングで見られる作品まで出てきました。

 例えば『アナと雪の女王2』は、通常より3カ月早い2020年3月15日から米国でストリーミング型の配信サービス「ディズニープラス」を通じて配信が開始されました。DVDなどの購入・レンタルが開始されたのが2月25日でしたから、わずか約3週間後のタイミングでした。通常数カ月後に行われるストリーミングでの配信がこれだけ早く開始されたのは劇場閉鎖に伴う緊急措置と公には説明されていますが、これはハリウッドが誇ってきたウインドー戦略が崩壊する予兆かもしれません。

 ハリウッドビジネスの大きな柱を形成してきた、ウインドー戦略。100年以上前に誕生したハリウッドビジネスは当初、映画館で映画を公開して観客に見せるだけで全ての投資回収手段を尽くしました。その後、「セカンドラン」で大成功して注目されたのが、ディズニーの世界初となる長編アニメーション『白雪姫』でした。この作品は、1度劇場公開で長い「ファーストラン」を終えた後、7年後に再び劇場公開を行いました。すると、大きな興行成績を収めたのです。時間の間隔を空けて提供することによって、1度ではなく2度、3度と収益機会が生まれることが認識されたのです。

 その後、映画館に加えて、広告モデルの地上波テレビやビデオ、DVD、有料のケーブルテレビ、デジタルによるダウンロードおよびストリーミングによる配信サービスなど、作品を提供できるメディアが生まれるたびにウインドー戦略は複雑に進化してきました。様々なメディアを通じて作品を消費者に届けるに当たって、緻密に計算された時間的間隔をもって繰り出していくこの戦略は、時間を上手に使って市場での希少性や価格差を利用し、作品のライフ・タイム・バリュー(LTV)を最大化すべく採用された考え方です。

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 ウインドー戦略によって、映画ビジネスは劇場というメディアだけでは達成し得なかった規模にスケールアップすることができました。一時期は落ち込んでいたハリウッドビジネスでしたが復活でき、現在の隆盛に大きく寄与しました。

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