「JCB消費NOW」の2020年1~12月までのデータが出そろった。同年4月の緊急事態宣言ではスーパーが特需に沸く一方で、百貨店が大きく落ち込んだ。通年で見るとこの傾向は変わったのか。コロナ前は小売りで一人勝ちを続けていたコンビニはどうだったのか。ECを含めた、20年の流通を見ていく。

約100万人分の決済データを活用して消費動向を調査する「JCB消費NOW」。毎月そのデータを読み解く本連載の第11回は、2020年の小売業の総括をする(画像/Shutterstock)
約100万人分の決済データを活用して消費動向を調査する「JCB消費NOW」。毎月そのデータを読み解く本連載の第11回は、2020年の小売業の総括をする(画像/Shutterstock)
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 2020年は新型コロナウイルスによって大きく揺さぶられた1年となった。21年に入りワクチンの接種が始まるなど前向きなニュースを耳にする機会は増えたが、年明け早々に緊急事態宣言が発出され、引き続き新型コロナウイルスの影響を避けることはできなそうだ。

 本連載では個人消費に焦点を当てているが、連載の開始が20年からということもあり、結果的にコロナ禍における個人の消費行動の変容についての分析となっていた。今回もオルタナティブデータを活用して個人の消費行動について分析をしつつ、そこから見えてくる企業に求められる変化を明らかにしていく。

 ジェーシービーとナウキャストがプライバシーを保護した形で加工したJCBカードの取引データを活用し、現金も含むすべての消費動向を捉えた国内消費指数「JCB消費NOW」のデータを見てみよう。下図はPCR検査による陽性者数とJCB消費NOWの代表的な消費指数の3項目(全体、小売り、サービス)の推移を重ねたものだ。

 昨年1年間の動きを簡単に振り返れば、国内で新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた3月から大きく消費指数は下落し、緊急事態宣言が発出された4月が底となり、宣言が延期された5月時点では既に底を打って回復傾向へ。しかし、回復も第2波の到来で頭打ちとなり、再び減速した。秋には再び回復傾向となるかと期待されたが、気温が下がり第3波がきて第2波のときよりも速いペースでマイナス幅を拡大して1年が終わった。

消費指数の推移(前年同月比、2020年)
消費指数の推移(前年同月比、2020年)
出所:JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」、厚生労働省のデータを基に著者作成。網掛け部分は第1波~第3波を表現
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 昨年12月の時点で消費指数は既に6月の緊急事態宣言明けの水準をやや下回るところまで落ち込んでおり、緊急事態宣言が再度発出された21年1月にどれだけ落ち込むのかに注目が集まる。コロナ禍で消費が大きく冷え込んだということは多くの方が想像していたことだと思うが、上図からしっかりと把握しておきたいことは、中でもサービス消費の落ち込みが一番激しかった一方で、小売り消費自体はそこまで落ち込んではいなかったということだ。

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