消費回復の足音が聞こえ始めた――。消費動向指数「JCB消費NOW」の購買ビッグデータを時系列で解析した結果、見えてきたのは「消費の底は4月後半だったのではないか」という仮説だ。コロナ禍で大打撃を受けた外食や娯楽などが景気の底を打ち、緩やかな回復基調を見せ始めている。
政府は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言について、2020年5月31日までの期限を待たずに同月25日に全面解除をした。しかし、東京では多くの業種に対して休業要請を出しており、6月1日にステップ1からステップ2へ外出自粛・休業要請等の緩和が進み、ようやく12日にステップ3へ移行。そして、19日に全面的な休業要請が解除となる。紆余曲折(うよきょくせつ)はあったものの、日本では少しずつ日常が戻ろうとしている。私たちの消費も今後は戻っていくのだろうか。それとも、既に消費は先行して回復していたのだろうか。
JCBグループ会員のうち、約100万会員のクレジットカード決済情報を基にJCBとナウキャストが算出した、現金を含む消費全体を捉えた消費動向指数「JCB消費NOW」の内訳から、まずは全体の概況を見ていく。下のグラフは2020年1月後半と5月後半との比較だ。「EC」や「コンテンツ配信」といったオンラインが伸びたことは容易に想像が付くが、それを上回る伸びを示したのが、「機械器具小売業」だ。パソコンやウェブカメラ、モニター、周辺機器といった、テレワークに必要なガジェットへのニーズが顕著に急増した。一方、「外食」「交通」「娯楽」の落ちも激しかったが、それを大きく上回る下落幅だったのが「旅行」と「宿泊」だった。
次にもう少しミクロの視点で見てみる。こちらのデータでも、最も上昇したのが「ECの機械器具小売業」。前述の機器をネット通販で購入した消費者像が見て取れる。小売りで興味深いのが「スーパー」だ。「百貨店」や「コンビニ」の不振を尻目に一人勝ちした印象があるが、1人当たりの金額は大きく伸びているのに対して、消費者数は実は減少している。行く頻度を減らして、まとめ買いをしていたと考えられる。EC以外の小売りで消費者数、金額ともに大きく増えたのは「酒店」と「家具」だった。
1月後半と5月後半の対比では、業種による優勝劣敗は明らかだ。だがもう少しメッシュを細かくして時系列を追ってみると、興味深いデータが出てくる。実は4月後半が底だったのではないか、という仮説が立てられるのだ。
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