数々のアワードで受賞を重ねるプランナーの清水覚が、自ら実践する「誰でも簡単にアイデアを量産し、ユニークな企画を次々と生み出す秘訣」を伝授する連載企画。第3回は、数々のヒット玩具を生み出してきたおもちゃクリエイターの高橋晋平氏に聞いた「企画のメモ技(テク)」を紹介する。
膨大な情報の中で、ヒットの種をどう見つけるか?
とめどなく流れるSNSのタイムライン。話題が一気に拡散すると同時に、一瞬で陳腐化し、また新たな話題が生まれ……。情報化社会と呼ばれて久しく、今や我々現代人はスマホ片手に、日々浴びるように情報を摂取しています。
第2回では、アイデアをたくさん生み出すための「強制発想法」について紹介しました。奇想天外なアイデアは、奇想天外な組み合わせから。そのためには、膨大な情報の中から、どうやってアイデアの種をストックしていくかが重要になってきます。
そこで第3回は、私自身が「強制発想法」を学び、(勝手に)心の師としているおもちゃクリエイターの高橋晋平さんに、著書のタイトルでもある「企画のメモ技(テク)」についてお話を伺いました。ヒットメーカーが語る企画術のエッセンスを、たっぷりとお伝えします。
すべての始まりは、「個人的欲求」
高橋晋平さんは、おもちゃメーカーのバンダイ出身。私が高橋さんを知ったきっかけは、国内累計335万個を売り上げた「∞(むげん)プチプチ(R)」です。たまたま自分もプチプチの包装材「浮世絵ぷちぷち」を作っていたので、「プチ」つながりを感じていました。
そして2018年、高橋さんが執筆した『一生仕事で困らない企画のメモ技(テク)』(あさ出版)を読んだところ、衝撃! 著書で書かれていたことは、今も私の基本になっています。バンダイを独立した後の現在も、たくさんのヒット商品を生み出している高橋さんは、良いアイデアを生み出すために、どんなことを心掛けているのでしょうか?
高橋晋平さん(以下、高橋) 「遊びを軸にした商品を作っているので、『どうやったら楽しいか』を常に考えています。『楽しい』にもいろいろ種類がある中で、自分は『笑い』が最大の欲求となっています」
「もともと、人見知りで内気だった」と語る高橋さん。クラスの人気者への憧れ、コンプレックスから、なんとかして笑いを取ろうという欲が生まれたそうです。
高橋 「はじめはウケなかったけど、徐々にウケるようになり、それが、あまりにも気持ちがよかった。そして就活のとき、理系ということでメーカーを受けたのですが、どこにも『笑い』がなかったんです。いろいろと調べる中で、『笑い』を作り出す玩具のメーカーに行き着きました」
高橋さんにとって「笑いこそ、最大の欲求」。おのずとフィルターに引っかかる情報も「笑えるか」「笑えないか」という軸で判断されます。つまり個人的な欲求こそ、膨大な情報の中から必要な情報を選ぶ軸なのですが、多くの人がそれに気づいていないのです。
高橋 「ほとんどの人は、自分が本当に何をしたいか、気づいていません。気づいていると思っていても、表層的なものであったり、自分に嘘をついてしまっていたり、根底にあるものをつかめていないと思います」
高橋さんの話を受けて、思い返してみれば、自分も「いたずら」が個人的な欲求であることに気づかされました。いたずらと言っても、誰かを不幸に陥れる類のものではなく、コントのような、笑いにつながる(しょうもない)仕掛けが好きで、狙い通りに相手が引っかかってくれた瞬間は、高橋さんの言葉のように「あまりにも気持ちがよかった」という感覚を持っていました。
高橋 「同じ笑いに行き着くとしても、人ぞれぞれで微妙な差があることがとても重要です。その差はわずかでも、フィルターに引っかかる情報というのは全然違ってきます。自分が何をしたいかを深堀りし、その解像度を上げていくことが最初にすべきことです」
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